カテゴリ:
スポンサードリンク



はじめに


強直性脊椎病変(ASD; ankylosing spinal disorders)は、高齢化社会の昨今、どんどん増えていくだろうと予測されます。
脊柱の可動性が失われているため、ちょっとした外傷でも脊椎の損傷を引き起こしてしまいます。

そのうえ、骨折部位に応力が集中してしまうので、骨は治りにくいのです。

初期に運良く神経障害がなくても、
“適切に治療が行われなければ”
骨折椎体が不安定化し、遅発性神経障害を高率におこしてしまいます。

適切に診断、治療を行うことが難しい


この、「適切に治療が行わければ」のところで、常に討論になるのですが、
原因の一つに、
診断の遅れ
が挙げられます。

過去のReviewでは、
ASDに伴う脊椎損傷において、約20%ちかく診断の遅れが生じていたと報告されています。

頚椎のASD骨折の注意点


ASDに伴う頚椎損傷の注意点としては、
C5-7高位での骨折が多いことです。

頚椎での骨折が見逃される原因は、たいてい、以下の3つだと思います。

①C5-6-7くらいの高位では肩が邪魔して、レントゲンでは判読が困難な場合があり、そのため骨折の有無を判断できない

②診察する医師側の判断のなかに、ちょっとした転倒くらいで、頚椎が折れるわけない、と思っている場合がある

③せっかくCTを撮像しても、受傷直後は転位が少ない、あるいは圧壊が軽度

わたしが経験した症例も他院のレントゲンで骨折なし、との判断で、
痛みが改善しないのみならず、数日後に上肢症状が出現したため、救急搬送されております。

神経症状が出現するころには、CTを撮像すると第7頚椎レベルに骨折が存在することが一目瞭然でした。

20150817_154258
20150817_153939


本日のまとめ


頚部痛を訴える患者に頚椎レントゲンを撮像した場合、ASDを認めた場合は、骨折の早期診断のためにはCTやMRIが重要だと改めて考えさせられました。

救急要請された場合は、単純な頸部痛ではない、思っていたほうが無難ですね。