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緊張性脊髄終糸症、脊髄終糸症候群、いわゆるTFT;tight film terminaleなんですが、
実は、わたしは診断できたことがありません。

TFTとは脊髄終糸の異常な緊張によって
脊髄円錐部が尾側に牽引されて起こす多彩な脊髄症状です。

脊髄終糸の役割


脊髄終糸とは伸び縮みの力がある軟膜が糸状になった組織です。
尾端から尾椎までつながっていて脊髄をハンモックのように支えてくれています。

病態


体を前に屈めると脊髄も前側、頭側に移動します。
そんな脊髄に強い牽引力が加わらないように終糸が調整してくれているのです。
その終糸がガチガチに硬いと伸びないので、
前かがみをする都度、脊髄に牽引力が加わってしまいます。

終糸の緊張状態によって脊髄の牽引が行われ、
頻回の脊椎前屈負荷によって腰膨大部を中心としたtraction myelopathyが発生する
とか
慢性牽引下の状態で、急性な牽引が加わると、
尾側脊髄に酸化代謝異常が発生する
とか
考えられています。

う〜ん、診断つけたことないんですよね。。。
文献的にも、診断に難渋し、遷延化してしまっているケースが多いようです。

これまでの医師生活で、一例もない、ってことはなかったのではないでしょうか。
それは、つまり、見逃している、ということです。
絶対に見逃さないぞ、ということで、
今回はtight film terminaleの診断についてまとめました。

臨床症状


臨床的には
1.腰痛、下肢痛、膀胱直腸障害
膀胱直障害は頻尿のケースが多く、90%くらいとされます。
2.脊椎不橈性、FFD>20cm
前かがみになると痛いですから体が固くなっています。
体操の前かがみをさせてみて、指先と床との距離が20cm以上離れていることが一つのサインです。
3.非髄節性神経障害
下肢痛、下肢しびれは髄節に一致する必要はないのです。
4.誘発テスト陽性
立位や座位で頚部を前かがみすると痛みが誘発されて、中間位にもどすと痛みが軽減するという所見です。

画像所見


画像所見はやはりMRIです。
終糸の過緊張を疑わせる所見として、
1.終嚢部の巨大化、先端部の変形
2.脊髄円錐部の後方移動
3.頸髄-胸髄のショートカットサイン 
脊髄の走行が脊柱管内において頭尾側の最短距離を通るように、極端にシフトしている
4.脊髄の横断面が緊張によって凸レンズ状にゆがむ
5.終糸の肥厚像、だいたい1.5~2.0mm
終糸の脂肪肥厚によりT1WIのaxial画像で高信号spotに捉えることができます。
病理ではたいていlipomaとの返事になります。

やっかいなのは、low conusでない症例もある、ということです。
つまり円錐部の高位に異常がないんですね。
TFTは、脊髄係留症候群tethered cordの分類でいうとgrade1に相当するので
解剖学的な異常が画像に描出されないケースがあるということです。

治療法


治療は肥厚した終糸を切除します。
きちんと脊髄誘発電位によるモニタリング下に切離します。
切ったあとには終糸の役割がなくなってしまいます。
それでいいのかどうかはわかりませんが、
診断を満たしていれば症状の大部分が改善することがほとんどです。

ぜったいに見逃さないという意気込みで、記事にしました。