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ケアネットに興味深い論文が掲載されておりました。

骨転移を契機に整形外科で原発巣を診断した患者を当該診療科にどう引き継ぐか
畑中敬之ら 整形外科と災害外科. 64(1); 155~158, 2015.

これは、ほんとうに苦労致します。

転移なのでstage4です。

当該診療科といえど、積極的な治療の対象となり得ないことがあります。
ともすれば受け入れてくれない可能性があります。

以前、前立腺がん加療中の転移性脊椎腫瘍、前立腺がんのメタで
脊髄症を急性発症され下肢麻痺を生じた患者さんが救急搬送されましたが、
転送先を探しましたがまったく受けてくれません。

しかし患者さんは脊髄症を発症しております。

やむを得ず、当院でまず除圧を行い、
手術が落ち着いたあとになんとか転送先を再度探したこともありました。

病理では既往とおり前立腺がんでした。

 
一般的に、転移性骨腫瘍は疼痛を伴うことが多く、
腰痛、頸部痛などを訴えて初診時に整形外科を訪れ、がんと診断されることが少なくない。
そのため、疼痛を訴えてきた患者において骨転移が認められる場合、
より早く原発巣を同定し、いちはやく当該診療科に引き継ぐ必要がある。

2013年4月から2014年2月までに著者の在籍する福岡東医療センター・整形外科にて
骨転移を診察・加療された患者のうち、
初診時に原発巣が同定されていない6例(男性4例、女性2例)に対して原発巣を探索し、
当該診療科に引き継いだ。
初診時の平均年齢は59~84歳(平均73歳)であり、悪性腫瘍の既往はなかった。

原発巣探索は、以下の高木辰哉氏の方法1)に基づき、2段階に分けて診察・検査を行った。

・第1段階:
病歴、理学所見、胸部X線、一般血液生化学検査、尿検査(BJ蛋白)
腫瘍マーカー(PSA, CEA, CA19-9, AFP)、
血清免疫電気泳動、胸腹部骨盤CT、骨シンチグラフィ

・第2段階:
骨生検、第1段階で原発を疑った臓器の生検、PET-CT
甲状腺エコー、マンモグラフィー、消化管内視鏡

上記の結果、6例中2例はCT、3例は電気泳動や腫瘍マーカーといった
第1段階の比較的簡便な検査が重要な手掛かりとなり、
原発巣が診断され、当該診療科に引き継がれた。
生検まで必要であった残りの1例についても、血液がんの可能性が高いと診断可能であった。

なお、この検査の注意点は、
・第1段階の検査結果が出そろうまでに1週間ほど時間がかかる点
・第2段階の検査は比較的侵襲が大きいため、
第1段階の検査を経て原発を強く疑うとき以外には行うべきではない点

などが挙げられる。

 初診時に原発不明な骨転移患者を診断する際に、
いかにスムーズに原発巣を探し出すかが重要である。
筆者らは、各臓器ごとの原発である確率を予測したうえで、
(・骨転移を初発として発見される原発巣は肺がもっとも多く、25~33%を占める。
その他に腎臓,前立腺,骨髄腫、悪性リンパ腫が多いと報告される。)
体系化された診断手順を用いることで診断に至るまでの時間の消費を防ぐことができると述べた。

また、日常からの他科との連携を深めることの重要性を強調し、結びとした。


著者が強調していることですが
・一般整形外科医なので骨転移は診れない、という事態は避けなければならない
・体系化した診断手順を用いることで、診断に至るまでの時間の消費を防ぐことができる
・常日頃から他科の骨転移患者に対して積極的対応を心がけ、他科との連携を深めることが必要

まったくその通りです。
ただし施設によっていろいろな障害があり、実践するのは困難を生じます。
しかし、困難が生じることがわかっていても打開していかないと、
医療に先はありません。

何度か初診で骨転移を来している患者を診察しました。
肺がんや前立腺がん、腎癌、甲状腺がん、乳がんなどは画像検索と採血でおおむね診断がつきます。

骨髄腫や悪性リンパ腫などの血液性がんを疑った時に、生検までするかどうか。

可溶性インターロイキン2レセプターを測定しても少々上昇しているくらいでは
なかなか診断がつかないです。
M蛋白電気泳動も当科で行って、疑いを持って生検までしないと
迅速な診断、迅速な引き継ぎはできないですね。


★★★
第3版が出版されています(管理人は第2版)。
さらに病態、画像、非常に詳しく脊髄脊椎が網羅されておすすめです。