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はじめに


足のしびれによる歩行障害を主訴に来院される方は少なくありません。

原因として

・腰部脊柱管狭窄症や椎間孔狭窄、腰椎椎間板ヘルニアなど
脊椎由来のもの
・閉塞性動脈硬化症や血栓性血管炎など
血管由来のもの

が代表されますが
治療を受けても、残存するしびれのほとんどは
足首から下のしびれが多いように思います。

絞扼性末梢神経障害のなかに、足根管症候群、というものがあります。

外科手術まで必要かどうか、議論のわかれるところですが、
しびれは、治らないんですよ、とか、老化だから仕方ありませんね、とか
患者さんに言う前に、もっと細かくしびれについて診察するべきと思っております。

前置きが長くなりましたが、足根管症候群について、まとめます。

外部リンク 日本脊髄外科学会HP

足根管症候群とは


くるぶし、足関節の内果(ないか)の後ろにあるトンネルを足根管と呼びます。

骨性の壁 (内果と踵骨と距骨)と屈筋支帯(くっきんしたい)
によって構成されます。

足根管をくぐっている神経が後脛骨神経です。

つまり、足根管症候群とは、後脛骨神経が圧迫されることにより生じる絞扼性末梢神経障害のことです。

後脛骨神経は、ふくらはぎの後ろを沿って、足根管をくぐり、踵と足の裏に通っている神経で、
足首、足の裏、つま先のあたりの感覚を支配しています。

足根管に炎症が起こったり骨の変形や屈筋支帯が肥厚して神経を圧迫すると
しびれや痛みが生じます。

日本脊髄外科学会HPより
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症状について


足根管症候群に最も多くみられる症状は、
足底部の痛み・しびれです。
日常生活が困難というわけではないけれども
非常に不快な感じの訴えが多いです。
「焼けるような」
「ピリピリするような」
「チクチクするような」
などと言われ、すこし外来で手こずるような感じです。

私見としては、
間欠性跛行の症状とくらべて、
・夜間の痛み、しびれ
・安静時でも改善しない痛み、しびれ
があるときは、要注意、思っています。

もちろん、立つ、歩くなどの運動時に増悪することも多々あります。

また特定の靴を履くと生じる、と聞くことができれば
診断の助けになります。

原因


原因として
・外傷後変化(足首の 捻挫、果部骨折、踵骨骨折など)
・足首の変形(関節リウマチなどの関節炎など)
・ガングリオン
・静脈瘤
・蛇行した動脈の圧迫
・心不全や腎不全などによる浮腫
・甲状腺機能低下症
・痛風
などあることもありますが、
日常診療では、たいていは原因がはっきりしないことが多いです。

診断


診断は決して容易ではないと思います。
第一に、疑って診察する必要があるため、
問診だけではスルーしてしまう医師が多いからです。

・足根管の圧痛
・Tinel sign
足根管を軽くたたくと、症状が誘発されます。
主訴とする部位と
誘発される足根管からアーチ部分、つま先に放散する痛み、しびれが
一致するはずです。
・神経伝導検査
後脛骨筋の神経伝導速度を調べます。
・レントゲン検査では特徴的な異常所見はありません。
・末梢神経ブロックは、診断的意義もあります。

治療


月並みですみませんが
・内服加療(抗炎症剤、ビタミン製剤、血管拡張剤など)
・末梢神経ブロック
・靴について装具、生活指導
・減圧手術(足根管開放手術)
です。
ガングリオンや変形など原因がある場合は別として、単なる足根管開放術に関しては
地域や医師によって、温度差があることは否めません。

まとめ


足根管症候群は、足の末梢神経障害であるため
かなり進行しない限り、日常生活には支障が出ません。
ただ、痛みやしびれは不愉快な症状であり、
患者さんの多くは医療期間に相談されているのではないかと思います。
手術まで必要かどうかは議論のあるところですが、
仕方ない、とむげにアドバイスするよりは
適切な病状の理解とアドバイスや治療を提供していくことが重要と考えます。