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はじめに


SSI; surgical sight infection
予防のためにどんなことを行っていますか?



ガイドラインの要約


骨・関節術後感染予防ガイドラインによると、
SSIの発生率は
・脊椎手術で0.6~11.9%
・初回人工関節置換術で0.2~3.8%

ということで、脊椎手術はハイリスクで要注意ということになります。

・起炎菌
黄色ブドウ球菌 表皮ブドウ球菌

・易感染性宿主
糖尿病、関節リウマチ、血液透析患者

・気になる生物学的製剤
昨今使用が増加している生物学的製剤(レミケードやエンブレル)ですが、
SSI発生との関係は低いとされました。

SSI予防のために効果がある処置


SSI予防のために効果があるとされる処置は、
ムピロシン(バクトロバン®軟膏)による鼻腔内除菌
クロルヘキシジングルコン酸塩(ステリクロン®)による全身皮膚除菌
が挙げられます。
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みなさん、どのように工夫されていますか?

鼻腔内除菌についての問題


わたしは、術前の鼻腔内除菌はあまり行えていません。
現実的には労力の問題とコストの問題が立ちはだかるのです。
そして、患者さんは手術前日に入院されることがほとんどなので、
どのタイミングで鼻腔のチェックをすればいいか、
そしてどのタイミングでMRSA陽性判定をして、
どのタイミングで除菌を行えばいいか、
うまく段取りができないのです。

ハイリスクの患者さんに限定しようと思っても、
どこからがハイリスクなのか、確かな基準がはっきりしません。
先に述べた易感染性宿主には行うべきなんでしょうが、
どの程度に人に必要か、結局主治医の主観になってしまいがちです。

いえ、もちろん重要と思います。
否定しているわけでありません。

むしろ、ガイドラインに“効果がある”と記載されている以上、
行わなければならない義務と考えなければならないと思っております。

なぜ鼻腔内除菌が重要となったのでしょう?

それはSSI発生部位の菌と患者の鼻腔内の菌が遺伝学的に高頻度で一致したためです。

これまではSSIの起炎菌は落下細菌に代表されるような外因性のものと考えられていました。
もしかしたら患者さん由来である可能性が出ているわけです。

クロルヘキシジンによる全身皮膚除菌について


こちらについては手術前日にクロルヘキシジン清拭あるいは全身浴は行うようにしています。
当日の皮膚もクロルヘキシジンで消毒した上で、気はコロロ、ポピドンヨードを使用しています。

その他の有効な対策は?


環境の素因を整理すると、
つまり手術室では
・バイオクリーンルーム
・スリッパの履き替え
になるのですが、これはあまり有用性がないそうです。

術者の素因に対しては
・閉鎖性ガウン
・全身排気スーツ、手術用ヘルメット
などですが、これもあまり有用性がないようです。

新しく、縫合糸に関して記載があります。
非吸収糸よりも吸収糸の使用がSSIの発生を抑制する
抗菌縫合糸も有用

ということで、バイクリルプラス®を用いています。

まとめ


とにかくSSIはツライです。

もちろん、患者さんが一番困るのは当然です。
さらに、スタッフ全員、誰一人幸せになりません。

SSI発生率ゼロを目指して、いいことは積極的に取り入れながら頑張りたいと思います。

なにかよい工夫があれば是非ご教示いただきたく存じます。