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はじめに


XLIFが本邦に導入されて、5000件を突破したそうです。

すごい現象です。

これま、つまり
・脊椎外科医のこれまでの手術適応を変えた
・行動を変えることができるほど素晴らしい効果がある
といっても過言ではありません。

ところが、件数が増加するにつれていくつか合併症が報告されています。
今回NuVasiveから緊急で注意喚起されました。

注意喚起


その注意喚起された合併症は、腸管損傷です。

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セミナーのおいても結腸の損傷については十分議論されておりました。

後腹膜腔の解剖


XLIFの安全な手術のためには、
後腹膜腔の解剖的な理解が重要で、当ブログでも度々記事にしております。
XLIFの後腹膜腔アプローチの理解のために。後傍腎腔?
出張XLIF、後腹膜腔の理解がまだ

結腸が後腹膜腔臓器であることはあまり理解されていない事実です。

腹部外科の先生に聴いても、
結腸は腹腔内臓器で後腹膜腔臓器と認識されていない方もおられます。

壁側腹膜の折り返しは結腸の腹側にあるため、結腸の背側は後腹膜腔にあります。

従来のオープン法の前方アプローチでは結腸が見えることがあります。
それは腹膜の折り返しのない結腸の背側をみているわけで、
腹膜を破って腹腔内に迷入したわけではないので焦る必要はありません。

Retrorenal colon


そんな中、後腹膜腔の脂肪組織が非常にとぼしく、腎臓周囲にすぐ結腸がある症例があります。

Retrorenal colonという状態です。
結腸が腎臓の
後外側に位置するものが9-10%
後側に位置するものが1%
Sherman: J Journal of Computer Assisted Tomography. 1985


腎臓の下極と大腰筋の間に位置しているケース
上行結腸が1.7%
下行結腸が0.7%
P.Prassopoulos: Abdominal Imaging. 1994


そのような後腹膜腔にアプローチしていくのは非常に難しいでしょう。

術前の画像検討


このような合併症を予防するために、
腹部全体が認識できるCTあるいはMRIを側臥位で撮像して評価することを薦めています。

腹部CTで
・後腹膜腔が小さい、
・脂肪織が乏しい、
・腎周囲に結腸がある、
ようなケースで、XLIFを予定しているならば、
アプローチ側上の側臥位で画像を評価してみたいと思います。

体位の検討


また、側臥位の際に腹部下にクッションパッドなどを敷いてしまうと、
①腹部が下から上へ押された状態になって、側臥位の重力効果がえられない
②腹腔内臓器が下方に垂れ込まない
③結果、後腹膜腔臓器を損傷してしまう
という可能性が指摘されています。

たしかに。

腹部はフリーでリラックスした状態になるように十分注意が必要ですね。

XLIFアプローチで注意していること


わたしはXLIFをするにあたり、次のように心がけています。

①すこし大きめのsingle skin incision

②指で後腹膜腔脂肪織を前方に剥離する際に
指で横突起をふれ、横突起を滑らせて椎弓根外側を触れる。

するともう後腹膜腔の脂肪組織はたいてい十分に剥離されています。

③脂肪織をレトラクターで軽度前方に牽引しながら、
ヘッドライトで照らし、腰方形筋を確認し、腸腰筋を確認。

④そしてマクセス開創器を挿入するときは、指で前方を保護しながら。

さいごに


XLIFは非常に優れた手術手技です。
ただし、小切開すぎて、
何が怖いかわからないまま手術が完遂してしまうところに問題が潜んでいると考えています。

わたしはまだまだビギナーなので、十分に注意して臨みたいと思っております。

以上、緊急注意喚起でした。

★★★
手術解剖学のバイブル。