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ファイル 2016-04-20 18 30 15

はじめに


ピロリン酸カルシウム沈着症というのがあります。
Calcium pyrophosphate dehydrate: CPPDと訳されます。

CPPD結晶が関節内に析出して関節炎を起こすのです。

今回、脊椎脊髄病学会に参加しました。
そこでCPPDが、なんと腰椎椎間板に沈着していたという症例報告がありました。

Crowned dens syndrome


脊椎診療においてCPPD沈着症はcrowned dens syndromeというものがあり
決してまれ、というわけではありません。

頚部痛、発熱、頚部運動障害を主訴に来院する高齢者がいれば、
一つの鑑別疾患であります。

急性の発症で頚部痛、発熱、そして炎症反応が陽性にでるため
髄膜炎や頚部の椎体椎間板炎などと鑑別が必要です。

CTを撮像するとCPPDが環椎-歯突起周囲に沈着しており、
あたかも王冠をかぶったように見えるため、
crowned dens syndromeという名称です。

自分としては王冠のようにみえるかなあ?という感じです。

MRI では、この石灰化を診断するのは困難です。

治療はNSAIDs投与でよいので、
診断をつけること自体が必要かどうかはなんとも言えません。

腰椎椎間板偽痛風


それがつまり、腰痛で発症するわけです。

報告されていた症例は、
発熱と急激な腰痛、炎症反応が陽性、ということで、
やはりあたかも化膿性椎間板炎のようです。

MRIではT1で等信号、T2で高信号を呈しており
やはり化膿性椎間板炎を疑ったそうです。

そこで起炎菌同定のために、
針生検、洗浄液の培養を行ったところ細菌培養はすべて陰性だった、と。

鏡検にてCPPDを認めたとのことで、
偽痛風と診断。

経過中に抗菌薬は使用せず
NSAIDs投与のみで速やかに症状が改善したとのこと。

これは、自分なら、抗菌薬投与してしまうなあ、と思った次第です。

教訓として


稀では有るが、腰椎椎体椎間板炎の鑑別疾患に偽痛風を考慮して、
生検の際には、細菌培養のみならず、組織検査も行うべきです。

という非常にありがたい教訓でした。

本日のまとめ


ちょうどいま、既往症のまったくない40代の男性が腰痛で苦しんでおられます。
37〜38℃代の発熱があり、WBCおよびCRPにて炎症反応を認めます。

全身CTや腰椎MRIでは急性期の所見を認めません。
化膿性椎間板炎と考えて加療中です。

次回フォローのMRIで椎間板炎を疑うようなら、
経皮的病巣掻爬ドレナージ(PSD: percutaneous suction aspiration and drainage)
を行う予定ですが、鏡検も行おうと思います。