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ファイル 2016-04-26 21 36 52

はじめに


高齢者人口や易感染性宿主の増加により
化膿性椎体椎間板炎の増加が指摘されております。

抗菌薬による安静加療が基本ですが、
改善が得られない場合や硬膜外膿瘍に発展してきた場合は手術加療が必要となります。

高齢者や担癌患者に多いため、手術は低侵襲が望ましいです。

本日は低侵襲加療法ひとつ、経皮的椎間板掻爬ドレナージについてです。

アプローチ


アプローチは椎間板造影同様です。
PEDでいうところのいわゆるpostero-lateral approachです。

側臥位の報告もありますが、
わたしは腹臥位で行います。

理由は側臥位では角度がずれやすく危険な印象があるからです。

ジャクソンベッドに通常よりパッドをおいて頭部はまくらとします。

術前CTで計測しておくこと


術前にCTで確認しておくことは、

・皮膚の刺入点
だいたい正中より外側10-12cm程度でしょう。
・上関節突起にあたるまでのだいたいの距離
予め深さを安全な測定しておいてそこまで刺入したら
いったん透視で確認します。
・刺入角度
・椎間板の前後径、横径、厚み

あと忘れていはいけないのは
・腸骨稜が進入路をじゃましないかどうか
high crestではL4/5でもアプローチは困難です。

透視の設定の仕方(L4/5を例に)

 
透視を頼りに行うので透視の位置がずれると命とりになりえます。
わたしが側臥位でしないのはそのためです。

局所麻酔なので体動があるとずれやすいのです。

正面、側面の2面透視で、
正面透視は斜位にも用います。

・側面
上下終板、左右椎弓根、左右椎間孔、椎体後壁が揃うように設定します。
ガイドピンなどが腹腔側にぬけないように適宜確認します。

・正面 
正中に合わせてCアームの角度計にテープで目印をつけます。
ついで、cranialにアームを動かして下位椎体の上の終板に合わせる。

L4/5ならL5上終板に合わせます。
4/5の前弯を考慮してcranial15度くらいでしょうか。

そしてその角度に固定して今度は斜位を合わせます。

上関節突起が椎間板の腹側1/3から1/2くらいになる角度に合わせます。

腹腔内臓器の位置や腸骨稜の位置を考慮して決めます。

L4/5ならだいたい45-50度くらい斜位にふれば上関節突起がいい位置にきます。

Cアームの角度径のところにテープでさらに目印を貼っておく。

そうすることでいつでも正面、斜位をさっと合わせることができます。

上関節突起の位置が大切なポイント


なぜ上関節突起で位置合わせをするかというと
刺入のsafety triangleに重要だからです。

上関節突起にガイドピンを当てるまでが
椎間板のいい位置にたどり着くための重要なポイントなのです。

safety triangleについては後述します。

手技


ここまでが設定です。
ついで手技です。

・カテラン針で刺入点から上関節突起までの経路を十分に局所麻酔

・透視の斜位を確認しながらガイドピンを上関節突起にむけて刺入する。
・あたったらすこし引いてsafety triangleを通って線維輪に到達

斜位にして、ガイドピンが、一点に映れば、
作戦通りの刺入ポイント、刺入角度、刺入経路です。

先述したsafety triangleが何かというと

・神経根の背側
・上関節突起腹側
・横突起下位椎体上縁

に囲まれた範囲のことです。
ここにはおそらくルートがいない、ということです。

線維輪に到達する際に神経根にあたったら
局所麻酔下の患者さんが動いて教えてくれるでしょう。
わたしはまだビクッとした経験ありませんが、、、

ガイドピン挿入


ガイドピンで線維輪を抜いて椎間板に到達。

此の時に斜位透視を正面にして、側面と合わせてピンが正中の適切な位置にあることを確認します。

ダイレーターを用いて椎間板までの経路を作成


今回は椎間板高が7.5mm程度に比較的保たれていたので
メドトロニックのMETRx開創器のダイレーター5.3mmでそのまま椎間板まで侵入

その後METRxの9.4mmのダイレーターで経路をダイレーション。

ガイドピンを置いたままダイレーターを抜いて、
今回は髄核鉗子のサイズで、ペンタックスの椎体形成用のインサーターを椎間板に刺入。

髄核の腹側、正中、背側の3段階にわけて掻爬しました。

その後エラスター針の先端をカットしていくらか鈍にしたものをいれて
三方活栓で洗浄と吸引を繰り返してその後ドレナージチューブを挿入して終了、
といきたかったんですが、、、

ドレナージチューブ挿入の難しさ


じつは、SBドレーンチューブの径が細くてしなってうまく入りませんでした。

チューブにガイドピンをいれて、適切な位置にもっていって
これはグッドアイデア!と思ったのですが、
ピンを抜いたときに、しなってぬけたみたいでした。

本日のまとめ


経皮的髄核摘出術みたいなものです。
術直後より腰痛の軽減を得ることもできます。
化膿性椎間板炎であれば起炎菌の培養同定も可能で、椎間板圧の減圧が得られるため
感染性の椎間板炎であればひとつの有用な治療のオプションです。