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はじめに


先日は腰椎神経根ブロックの話でした。
本日は
C-armを用いた頸椎神経根ブロック
についての話です。

神経根ブロックの問題点


神経根ブロックの問題点に

false positive(高齢者など)

チクっとされると、本来の神経痛とは異なっていても
「いつもの痛み」と言ってしまう。

そして、ブロックした後に、なんとなく
「よくなった」と言ってしまう。

痛みが主観的な症状である以上、
ブロックに対する理解力、協調性などが求められます。

false negative(技術的な問題)

本来症状を惹起している正しい神経根であるにも関わらず
ブロック針の位置が適切でないために
信頼できる再現痛や、効果ある痛みのブロックができない。

結果、高位診断されない。

他にも
ブロック針による
・神経損傷
・神経炎
などの直接の被害も起こりえます。

そこに頸椎神経根ブロックとなると、
もっとも怖いのは
・椎骨動脈穿刺
でしょう。

めまいや耳鳴りから
脳梗塞、意識障害、けいれん、など、

ただのブロックのつもりが大惨事を引き起こす可能性があり、
頸椎神経根ブロックは敬遠されがちです。

安全な頸椎神経根ブロックを行うためのルール


よって頸椎神経根ブロックの場合は、
絶対に椎骨動脈には穿刺しない
ためのルールを決めて行います。

まずブロック前の画像を用いて
該当椎間孔部の椎骨動脈の位置を確認します。

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椎骨動脈はたいてい外側塊の内側1/2くらいを走行しているはずです。
よって、
ルール①
・正面像では外側塊の1/3、最低でも1/2は超えない

011


そして斜位にすると、椎骨動脈は椎体の後縁を走行しています。
よって、
ルール②
・斜位で椎体の後縁を避ける


です。
010


頸椎神経根ブロックの透視の合わせ方


ここでもメルクマールは腰椎同様、上関節突起です。

椎間孔後縁上関節突起前面がブロック針が進む方向です。

もっとも椎間孔が描出できる角度は
中下位頸椎であれば、斜位にcaudalから覗きあげる方向です。

009


血管造影室のC-armに
①正面、②側面、③斜位+caudal
をメモリーさせておきます。

その3方向で適宜透視を確認しながら、
まず、上関節突起にブロック針を当てて、
上関節突起前面へすべらせるように穿刺していきます。

絶対に上記ルール①、②を破らないように。

ブロック針を進めていくときの工夫と安全に行うためのmind


わたしの工夫としては、
腰椎のブロックのときと同様に

1. 人差し指で軽くブロック針の頭をトントン刺激して

神経根刺激が誘発されない場合は

2. 中指でもうすこし強くトントン刺激します。

それでも誘発されない場合に針をすこし進めます。

ある程度、再現痛が誘発されることを目指しますが、
そこにこだわりすぎると、
デリケートな位置で穿刺針の抜き差しを繰り返すことになるので
頸椎に関しては、わたしはあまり再現痛を得ることにはこだわりません

ただしこの手順で行っていれば、たいてい、トントンの刺激に同期される
なんらかの根症状を得ることができます。

よって神経根造影が得られず、斜角筋造影になったとしても
ブロック針が椎間孔部後面で、外側塊外1/3程度の
割りと適切な位置にブロック針があれば、よしとしています。

手技としては、だいたい10-20分くらいでしょうか。

本日のまとめ


頸椎神経根ブロックは、神経根前面に椎骨動脈が存在するため
安易には行いにくい場所です。

ルールを決めて、安全に行うためにC-armは有用です。

脳外科や循環器科が使用していない時間帯があるならば、
血管造影室のC-armを使い倒してみてはいかがでしょうか?

昨今のペインクリニックでは
超音波を用いた安全な頸椎神経根ブロック
を外来レベルで行うことができるそうです。

こちらも是非習得したい手技ですよね。


この教科書にC-armを用いた神経根ブロックについての項があり、非常に勉強になりました。