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はじめに


最近、腰痛について深く考えさせられています。

きっかけは
山口大学 鈴木秀典先生の論文「慢性腰痛(非特異性腰痛)」の治療 
脊椎脊髄 29(1): 35-41, 2016
です。

腰痛患者のうち非特異性腰痛と診断されていたもの72%は診断が可能であり、
どうしても診断が難しいものが28%で、これが真の非特異性腰痛の割合である。

よって腰痛患者の78%は整形外科専門医が詳細な診察を行えば診断が可能である。

という結論です。

自分も診断の精度を高めたいと思い、腰痛診療のアップデートを開始しています。

今回はSAPHO症候群についてです。

SAPHO umbrella Clinical Radiology 67 (2012) 195-206
03

SAPHOって何?


SAPHO症候群のSAPHOって何?

SAPHOは全部大文字で、個人名ではありません。
特徴的な症状の頭文字を組み合わせたもので、
提唱した先生は、Benhamou, Chamotらです。
原本は読んだことはありませんが(汗)
Clin Exp Reumatol. 6 : 109-112, 1988.

症状の頭文字、けっこう覚えにくいんですよね。
あまり馴染みのない単語です。

S: Synovitis 滑膜炎
A: Acne 座瘡
P: Pustulosis 膿疱症
H: Hyperostitis 骨化症
O: Osteitis 骨炎

基本的には
皮膚症状が84%
関節炎症状が92.5%
です。

脊椎診療でのSAPHOの問題点①
皮膚症状が先行しないSAPHOがある


このSAPHO症候群なのですが、
なぜわたしたちの脊椎診療のなかで問題になるか、
というと、この代表的な皮膚症状が先行しない例があるのです。

皮膚症状を伴わずに、関節症状が先行する例が、
なんと32%もあるのですね。

逆の言い方をすれば、皮膚症状は7割近くにある、ということなんですが、、、

内訳は
皮膚症状先行 39%(だいたい4割)
皮膚症状と関節炎症状が同時 29%(だいたい3割)
です。

腰痛を主訴に来院され、
なんか思うようによくならない
通常の腰痛と経過が異なる
ということでMRIを撮像すると骨炎がある。

ただし皮膚症状はない。

よって、SAPHO症候群とは、診断がつかないですよね。

脊椎診療でのSAPHOの問題点②
初回MRIでSAPHOの脊椎炎の特徴を呈しているとは限らない


SAPHOの脊椎炎の特徴としては
多発性、反復性
ということが挙げられます。

ただし、初診時が、まったくの初回症状で多発性病変なし、
ということも当然あるわけです。

やはり経時的なフォローが大切で、
しかもそれはMRIでのフォローが重要ということになります。

脊椎診療でのSAPHOの問題点③
基本的には除外診断


よってまずは骨炎をMRIで発見すること
そして、骨炎を起こす疾患を鑑別していくわけです。

具体的には感染や腫瘍の除外です。

それがまた、簡単ではないですよね。

腫瘍とか、結核性のものとか、反応性関節炎などもありますし。

鑑別疾患をどれだけ多くあげられるか。
そして除外していくか。

まさに腰痛診療の醍醐味というところでしょう。

本日のまとめ


これまで非特異性腰痛が80%以上として
腰痛診療を行っていましたが、
もっともっと精度を上げていく努力をしなければならない
と反省しています。

SAPHO症候群は、これまで1例しか経験したことはありません。

それでも脊椎診療を行っている以上、
しっかり鑑別に挙げておかなければならない症候と思い、記事にしました。

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