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はじめに


わたしは積極的に
MISt: minimally invasive spine stabilization
の手技を取り入れています。

代表される手技のひとつに
PPS: percutaneous pedicle screwを用いたPSF: pedicle screw fixationがあります。

透視下あるいはO-armなどのナビゲーション下に経皮的に刺入するもので、
後方のback muscleや靭帯組織などの脊柱支持組織に対する侵襲を最小限に抑えることができます。

出血量や感染症を低減できることが非常に大きなメリットです。

O-armは最高峰


O-armはいまの脊椎手術のナビゲーションとしては最高峰で間違いありません。
解像度や正確性ではO-armが一番であろうと思います。

ただし、
重たい・・・手術室の床が運用に耐えられるか
大きい・・・手術室に入るか
高い・・・具体的な費用はわかりませんがC-armとは値段が一桁異なる
というのがなかなか導入に踏み切れないところではないでしょうか。

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当施設でもまだまだ導入には至らず、PPSは透視を2面用いて行っています。

C-armの難点


C-armは、頸胸椎移行部が弱点です。
肩甲骨、肩、上腕に遮られて側面の透視が見えないのです。

もちろんO-armでも体型によっては円の範囲におさまりきれないことがあるかもしれませんが、、、

よって上位胸椎の場合、従来のようにopenで展開し、スクリューを挿入することになります。

頸椎においては経皮スクリューはまだまだ実現は遠いと思います。
椎弓根が3.5-4.0mmと狭く、椎骨動脈、脊髄、神経根の距離が非常に近くて
危険きわまりないからです。

症例提示


症例を提示します。

高所からの転落で受傷された男性です。
第4、5、6の肋骨骨折および血胸とTh5のChance骨折です。
DISHで、下位頸椎からT3まで、T6からT11まで癒合して、そのT4とT5が癒合未椎体です。

T6に対して3 above 3 belowでの後側方固定を考えました。

術前に放射線科に頼んで、胸椎の側面像で可能な範囲を撮像してもらいました。

するとT3がぎりぎり撮像されました。

もしかしたら、PPSいけるかな、とおもって
放射線技師と協力して、術中体位をとって側面透視を入れたら、
T3椎体の椎弓根までギリ可視化できました。

これなら、ということで、PPSを用いてPSFを施行しました。
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手術時間は3時間10分、出血はガーゼカウントで80ml程度でした。

本日のまとめ


O-armは透視が回転する円の範囲内におさまる限り、
どこでもナビゲーションできるのが強みです。

頸胸椎移行部はC-armでは苦手です。

今回は運良く側面透視で捉えることができたので、最小侵襲の手術が可能でした。

放射線科技師さんの方々の協力のおかげで、わたしのPPSの最上位記録です。

ただ、透視で見えづらいのであれば、最小侵襲にこだわってはいけません。
見えないならばopenで見るしかないです。

最小侵襲だからといって安全が担保されなければ、本末転倒ですから、、、

★★★
MIStに関わろうとしている脊椎外科医へ。手技に関する待望のバイブルが完成です。