強直性脊椎骨増殖症(ASH)と強直性脊椎炎(AS)の違い
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はじめに
強直脊椎をご存知でしょうか?
強直とは、普段聞き慣れない言葉です。
Wikipediaによれば、
強直(きょうちょく、ankylosis、anchylosis)とは関節部の骨および軟骨の変形や癒着が原因でおこる関節可動域制限のことである。硬直は筋肉が硬くなることであり、強直性脊椎炎、顎関節強直症、舌小帯強直症、筋強直性ジストロフィー等に用いられる。とあります。
強直脊椎とは、脊椎と椎間板が連続して骨化してしまった状態です。
レントゲンやCT上、脊柱があたかも竹の節のように映るため、bamboo spineなどとも称されます。
骨化しているため本来の脊柱のしなやかな動きがなくなって、一本の柱のようになってしまいます。
原因として、
・強直性脊椎骨増殖症(ASH: ankylosing spinal hyperostosis)
・強直性脊椎炎(AS: ankylosing spondylitis)
があります。
混同されがちなので違いをまとめました。
強直性脊椎骨増殖症(ASH:ankylosing spinal hyperostosis)
・強直性脊椎骨増殖症(ASH:ankylosing spinal hyperostosis)は1950年にForestierにより報告された.
・有病率は人口の3〜12%程度
・主に前縦靭帯を中心に脊柱靭帯のびまん性の連続した骨化を伴って脊椎が強直に至る病態
・加齢性変化非炎症性変化であり、基本的には無症状で経過する.
・現在ではResnickが提唱した,骨に付着する全身の靭帯や腱の骨化を呈するびまん性特発性骨増殖症(DISH:diffuse idiopathic skeletal hyperostosis)の一部分症として認識されている.
・Resnickらの診断基準によれば,骨化が少なくとも4椎体に連続し,椎間板は比較的保たれており変性所見はなく,仙腸関節には骨びらんや強直化などの病変が生じていないものとされる.
・特発性で非炎症性全身性進行性疾患であり,脊椎では下位胸椎や頚椎に好発する.
・後縦靭帯骨化症や黄色靭帯骨化症の合併のため脊柱管狭窄を伴うことが少なくない.
・高齢の男性に多い
・2型糖尿病や肥満症などの内分泌系疾患の関与や生活習慣との関連性が示唆されている
など。
強直性脊椎炎(AS: ankylosing spondylitis)
・欧米での発生率は0.1-1.4%とされるが,日本においてはさらにまれで,日本での有病率は0.04%程度と報告されている
・仙腸関節を主病変とする
・多くは20-30歳台の若年男性に発症する
・ASHが非炎症性加齢性変化であることに対し,ASは脊椎関節炎の疾患群に属する
・虹彩炎,クローン病,潰瘍性大腸炎,乾癬,掌蹠膿疱症などの合併
・HLA-B27の陽性
・慢性炎症性疾患であり,若年期より腰部,背部,股関節,膝,肩関節のこわばりや痛みなどの症状を呈することが多い
・重症例の進行期には脊椎および仙腸関節での広範な強直に至る
強直脊椎の問題点
以上のようにこの2つは疾患名はよく似ていますが、病態や臨床の経過が明らかに異なります。
しかし、問題点は共通しています。
それは、骨折しやすいことです。
脊椎が1本の長管骨様になって一見固い骨のように思えます。
しかし、実際は骨は脆弱で折れやすい骨なのです。
その理由は、椎体に生理的なストレスが加わらず,骨廃用をきたすためです。
さらに脊柱の可動性や弾力性が失われているため,軽微な外傷でも骨折しやすくなります。
ちょうど千歳飴がポキっと折れるような印象です。
そして骨折した後は,骨折部位がてこアームのように作用して
骨折部位に応力が集中するため、なかなか骨癒合が得られません。
ずれて神経症状を呈することが多々報告されています。
よって強固な内固定が推奨されるのです。
本日のまとめ
混同しやすいASHとASについてまとめました。
病態は異なっても骨折しやすいこと、骨折に対して強力な固定が必要になることは
共通した考えになります。
往々にして大変です。
診断の遅れが問題になるので要注意です。
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コメント
コメント一覧 (7)
コメント有難う御座います
痛みに関してもですが 今は診断をして頂ける医者が必要な状況どす
その他症状が多数抱えてて 便秘 排尿障害 呼吸困難 息切れ 両上肢指先の痺れ 歩行障害 時に飲み込み困難 身体も感覚障害等々どす
痛みと重なり苦痛を感じる症状に悩まされています
治療法が無いにしても 言い渡された診断も確定診断ではなく?でした
此から診断のための受診先を探します
関東に通院していましたが 歩行障害と痛みで限界が来て東北で探すつもりです
このような場末のブログに足を運んでくださり誠にありがとうございます。痛みのためつらいこと、お察し申し上げます。ASは炎症性疾患がベースにあるため、どのように炎症反応をおさえていくか、がポイントでありますが、Loveさんが苦しんでおられるように根治の方法がありません。どの医療機関においてもステロイドやTNF阻害薬、解熱鎮痛剤などを併用し疼痛をコントロールしていくことが一般的と思います。わたし自身は合併する脊柱管狭窄症による神経症状の手術や、骨折に対する外科的再建を行っており、外来で炎症を抑える診療は膠原病内科の先生にお願いしているのが現状です。治療薬に対する知識がないためであります。根治的治療がないだけに、わたしが考える最も重要なことは主治医との信頼関係に尽きると思います。膠原病内科、ペインクリニック、心療内科(うつ病という意味ではありません。不安を除く専門家、という意味です。)、運動療法のためのリハビリ科などの連携が重要になってくると思います。痛みは病態が複雑なので、Loveさんの痛みに対しては、ひとりの主治医ではなく複数の科の主治医の連携をもって、信頼関係を築きながら治療にあたっていくのがベストだと思います。疼痛に対する不安が少しでも解消され生活の質が改善することを心からお祈り申し上げます。このブログで個人の医師を紹介することはできませんので、ご容赦ください。
返答させていただくにあたり、このブログは医療従事者、とくに医師を対象に記載しているもので、誠に申し訳ございませんが、個々の医療相談の対応窓口ではないことをまずお断り申しあげます。
強直性脊椎骨増殖症は炎症をきたすような疾患ではなく、経時的な加齢性変化(年を重ねるごとにゆっくりと変化していくようなイメージ)と考えられています。長時間の立位あるいは座位での疲労性の腰痛、後弯変形に伴う関連症状がときに生じると思いますが、基本的には概ね通常の生活のなかで痛みが強い日、弱い日、あるいは痛い日、まあまあの日を繰り返しているように思えます。
なので、梅田さまの症状のような「立ち座り、寝返り時の激痛」というのは強直性脊椎骨増殖症をベースに何かほかに骨傷をきたしていないか、椎間板や関節、筋肉に炎症をきたしていないか、あるいは他のレッドフラッグになるようなサインがないかどうかが気になります。強直性脊椎骨増殖症を現在の症状の診断名にあげるのではなく、他に梅田さまの痛みの原因になる病態がないかどうかが心配になりました。
以上のように、診察もしていないのにコメント内容の症状だけで、わたしの根拠に乏しい無責任なコメントになってしまいます。なかなか医療相談をメールで出来ない理由です。やはり医療行為は患者さんの病状に対して医師の診察があり、診察に対してさらに病状の特徴を問診するというプロセスを経て検査、診断を得た上で治療を行っていくものなので、メールでは回答し難く存じます。申し訳ございません。
梅田さまの症状の改善をお祈りいたします。
どうか、ご教授をお願いします。
すみません。その質問にはわたくしの知識では答えられそうにありません。
現時点で強直性脊椎骨増殖症は、特発性の非炎症性変化とされ、加齢性変化に伴うなんらかの糖や骨、脂肪などの代謝性変化が関連している可能性が指摘されております。病気なのか加齢変化のひとつのパターンなのか。この病態が強直性脊椎炎とは異なります。結果として強直脊椎に至るので、骨折の治療が非常に大変なのと骨折の診断がおくれがちになってしまうことは共通しています。よって治癒、治療という意味では難病だ、というご意見もごもっともな事なのですが、難病指定されないあるいは難病指定になる理由は、わたしにははるか及ばないところにあります。強直性脊椎炎は他の炎症性疾患を合併していることが多いため慢性炎症性疾患(つまり疾患)にカテゴライズされています。場末の一医師に可能なコメントはここまでです。ご容赦ください。
メールいただきありがとうございました。