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はじめに


術後せん妄
:delirium
:postoperative cognitive impairment
は発生してほしくない周術期の合併症の一つではないでしょうか。

脊椎手術も術後せん妄を引き起こしてしまいます。
もしかしたらわりと高率かもしれません。

術後せん妄になると見当識がなくなって、
怒ったりや頑固になったりと、非協調的になって
点滴は抜くわ、導尿カテーテルは抜くわ、で大騒ぎになってしまいます。

しかし基本的には術後せん妄は元に戻ります。
よって術後せん妄は適切に対処する必要があります。

術後せん妄を防ぐ方法はあるのでしょうか?

リスクファクターは何か


手術侵襲が直接の原因であることは間違いありません。
脊椎術後せん妄の発症要因として、いくつか論文を提示します。

メタアナライシスでは
Shi C, et al: Risk Factors for Delirium After Spinal Surgery: A Meta-Analysis.
World Neurosurg. 2015 Nov;84(5):1466-72.
・age >65 years
・female sex
・number of medications
・low preoperative hematocrit and albumin
・duration of surgery
・intraoperative blood loss
・low postoperative hematocrit, hemoglobin, and sodium
・postoperative fever

がリスクファクターとされています。

Brown CH, et al: Delirium After Spine Surgery in Older Adults: Incidence, Risk Factors, and Outcomes.
J Am Geriatr Soc. 2016 Oct;64(10):2101-2108.
では、高齢者の40.5%に術後せん妄が発生しています。
・認知機能低下症例
・術後疼痛高値症例
・静脈内輸液過剰症例
・多剤抗うつ薬症例

に術後せん妄が多いようです。

Lee YS, et al: The Prevalence of Undiagnosed Presurgical Cognitive Impairment and Its Postsurgical Clinical Impact in Older Patients Undergoing Lumbar Spine Surgery.
J Korean Neurosurg Soc. 2016 May;59(3):287-91.
・高齢
・認知症あり


Balabaud L, et al; Lumbar spine surgery in patients 80 years of age or older: morbidity and mortality.
Eur J Orthop Surg Traumatol. 2015 Jul;25 Suppl 1:S205-12.
The delirium was associated with
instrumentation (22 vs. 7%, p = 0.017)
and blood loss (520 vs. 348 mL, p = 0.034).
・インスツルメント手術
・術中出血量


Jiang X, et al: Risk factors for postoperative delirium after spine surgery in middle- and old-aged patients.
Aging Clin Exp Res. 2016 Oct 20.
・術中低血圧<80mmhg
・術中デゾシン(オピオイド鎮痛薬)使用


どんなリスクファクターがあろうが、言うまでもなく手術が原因です。
よって、これらのことをまとめると
・手術時間を短くする
・痛くない低侵襲手術をこころがける
・出血量を少なく抑える
・なるべくインスツルメント手術を避ける
ということを努力しなければなりません。

手術室内で頑張ることは当然です。
ただし、術後せん妄を来すトリガーというものも考えられます。

すなわち、トリガー;誘発因子を減少させることも術後せん妄の予防につながる大切な事なのです。

トリガーを減少させることが重要


これらのリスクファクターがあるところに、
患者さんには、
・入院による環境の変化
・術後疼痛
・不安
・コルセットの圧迫感、閉塞感
・強制的臥床安静
・睡眠障害
などが加わります。

患者さんは不安の塊なのです。
他にもモニターやドレーン、導尿カテーテルも留置されています。

これらがトリガーとなってしまうのです。
よって、
・ハイリスク患者には術前に十分説明する
・術後の疼痛にしっかり対応する
・術後の早期から離床を促し散歩やリハビリを行う。
・家族の面会などを通して不安を除く
・昼夜の刺激で、睡眠と覚醒のリズムを整える
こうしたことが術後せん妄を予防するだけでなく、治療にもなると思います。

術後せん妄が収束するまでは家族や看護師の労力は大変なものです。

患者の訴えを真っ向から否定することはせずに、タッチングしながら受け止めて、
何らかの形で改善してあげるようにしましょう。

本日のまとめ


ひとたび術後せん妄が起こると、
安静が保てず危険であり、家族や看護師の労力が非常に大きくなります。
周囲の患者さんにも多少なりとも迷惑がかかります。

起こってからの労力を考えると、予防の労力の方がはるかに少ないです。
ぜひとも予防に努めましょう。

大切なことは十分なコミュニケーションです。
手術前から患者さん、家族、医療スタッフ間で連絡をとり、お互いに協力しあっていきましょう。