硬膜外膿瘍ではなく、な、なんとピロリン酸カルシウム結晶沈着症でした。
スポンサードリンク
はじめに
結晶誘発性関節炎なるものがございます。
・痛風(gout)
・ピロリン酸カルシウム結晶(CPPD: calcium pyrophopate dihydrate crystal deposition disease)
・ハイドロキシアパタイト結晶(HADD; hydroxyapatite crystal deposition disease)
などです。
脊椎では、しょっちゅう出会うものではありませんが、
まれに石灰化病変が大きくなって脊髄の圧迫症状を発症し、外科的治療を要することがあります。
通常、脊髄障害は緩徐発症で、急激な発症はあまり報告されてはおりません、、、
硬膜外膿瘍かと思った
発熱と激烈な頚部痛が主訴で、髄膜炎の疑いで神経内科入院となり、
その後急激に四肢麻痺を呈したため当科紹介となりました。
炎症反応が強陽性で、臨床経過でも術中所見でも硬膜外膿瘍と思いました。
ただ術前のCTで同部位の黄色靭帯に石灰化を認めたため、
培養のみならず病理にも提出したところ
診断がピロリン酸カルシウム結晶ということで、
本当に驚きました。
急激な頸髄障害発症のCPPD沈着症
正直、こんな急激な頚髄障害発症ってあるの??
という感じでした。
有名なCrown dens syndromeのように
急激な頚部痛発症ということはあっても、
脊髄症は圧迫病変による緩徐進行の様式という理解でした。
本日のまとめ
硬膜外膿瘍は脊椎診療科における数少ない救急疾患です。
脊髄症を発症している場合は全身状態が合併症にもよるところはありますが
緊急での除圧、ドレナージを行うことが鉄則だと思います。
まさかCPPDだとは、、、
たしかに、炎症反応は、抗菌薬は追加投与せずにNSAIDsのみで改善しました。
脊椎診療は、本当に奥深いです。
★★★
第3版が出版されています!!(管理人が所持しているのは第2版) さらに病態、画像など、非常に詳しく!!脊髄脊椎が網羅されておすすめです。
@yotsuba_spineさんをフォロー
コメント
コメント一覧 (4)
いつも示唆に富むコメントありがとうございます。鑑別疾患をいくつ挙げられるかが常に診療に求められていることだと思います。AIが特異とするところで、これからのAIの台頭により、わたしのようなものは真っ先に排除されていきそうです(涙)。
投稿ペースについて激励いただき、ありがとうございます。励みになります。関西弁さんにインスパイアされております。今後ともよろしくお願い致します。
結構圧迫の強いケースで、内容物は今回提示された写真と同じ白色の膿瘍様でした。病理でCPPDが検出されたと記憶しています。
以前、腰椎のCPPD沈着による腰痛について投稿されていましたが、たまーに強い背部痛を訴える方のMRIで椎体に信号変化はないものの、椎体前面のALLに沿ってSTIR 高信号変化を認めることがありCPPDの存在を強く意識するきっかけとなりました。
最近、投稿ペースが落ちていますが(笑)、引き続きよろしくお願いいたします!
はじめまして。サポーティブなコメントを頂まして誠に有難うございます。MRIは提示しておりませんが、急激な進行でしたので、硬膜外膿瘍と思っておりました。病理からの返事がCPPDとのことで、骨まで愛してさんのご指摘のように、え?CPPDでこんな経過をとるの?という感じでした。わたしも今回の件は症例報告に値するのではないかと思っておりました。Publishされるよう頑張ります!有難うございます!
以前に同様の症例、頸椎黄色靭帯石灰化症による急性四肢麻痺を経験しました。
通常は圧迫性頚髄症を生じますが、本当にCPPDが急性脊髄障害を生じるか疑問ででした。文献を調べても本邦では4例程度しかなかったと思います。除圧して改善したので、結果はよかったのですが、恐る恐る手術をした記憶があります。(神経内科疾患がかくれているのではないかと)
学会発表まではしましたが、papaerにはしていないのでぜひ先生には症例報告(papaerまで)をしてこのような脊髄障害があることを認知させてほしいです。