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はじめに


頚椎前方除圧固定術は、
頚部前面を切開し、気管や食道を避けて椎体の前面にアプローチし、
椎体間にケージと呼ばれる椎間板代替のものや自分の腸骨の一部を挿入して、
椎体同士がぐらぐらしないように固定する手術です。

脊椎外科医が行う手術の基本手技の一つです。
しかし基本手技だから、安全な手術というわけではありません。

ときに記事にしておりますが、やっぱり怖い手技です。

なにが一番怖いかというと気道閉塞です。

生命の危機に直結する気道閉塞


知らないと怖いです!頸椎前方固定のドレーン管理。
でまとめておりますが、

頚椎前方手術では気道が閉塞してしまう恐れがあります。
閉塞はすなわち、窒息なので、あっという間に生命の危機に及んでしまいます。

じつは、今回もあやうい状況になりました。
怖い!

創表面が腫れて無くても、咽頭後壁、椎体前面の軟部組織の腫脹が起こる


今回は、外傷例なのでなおさら心配です。

圧潰損傷した椎体を亜全摘し、自家腸骨で固定を行ないました。
(ギャップができて格好悪いです、、、)
(そしてドレーンが引き抜けてしまっている、、、)

平静に夜を過ごしたのですが、
術翌朝から、呼吸困難感を訴えはじめたのです!

当然、経過観察などの指示は出しません。

創部を観察しましたが表面の腫脹は大したことありません。
これも前方固定の罠の一つだと思います。
レントゲンを撮像したところ、
咽頭後壁、椎体前面の軟部組織の腫脹が著明です!

そう、表面の腫れは手がかりの一つに過ぎず、表層が大丈夫だからといって
気道が大丈夫である保証が得られるわけではまったくありません。
これは本当に注意が必要なことです。
他科の当直医や若手の先生には判断できないところかもしれません。

今回のように、表面が腫れて無くても、咽頭後壁や椎体前面の軟部組織が腫れていれば
気道閉塞の危機です。

これは緊急事態です。

例え、その時、患者さんの自覚症状のみで
呼吸回数や酸素飽和度には異常がないからといって
放置できない状況です。
001

経過観察が正しくない場合


呼吸困難感を放置すると、
次の悪化のサインは
努力用の呼吸、静脈の怒張、肋間筋の動き
です。

しかし、実際その状況をあっという間に飛び越えて
あえぎ、もがき、不穏、チアノーゼ、
そして呼吸停止

とラッシュに事が進行してしまう可能性すらあります。

麻酔科の先生と協議し、この時点で鎮静下に再挿管することといたしました。
もちろん、患者さん(ならびにご家族)には誠意をもって対応いたしました。

挿管後ステロイドを使用し、術3日目にリークテストで閉塞しないことを確認し、抜管しました。

術3日目、7日目ではもうだいぶ軽減しました。
もちろん患者さんも元気です。

果たして、挿管しなくてもよかったかもね、という意見もあるかもしれませんが、
その楽観的な判断が誤った場合の代償はとてつもなく大きいものです。

とくに今回は外傷後の手術であったので、慎重に対応して正解だと思っております。

本日のまとめ


本当に前方固定は恐ろしいです。

とくに上位頸椎の手術は要注意です。
気管軟骨がない部分なので上位頸椎の軟部組織の腫脹は容易に気道閉塞をきたします。

論文は拝見できておりませんが、医中誌を検索するとこのようなタイトルのものがみつかりました。

「【脊椎手術】 頸椎ヘルニア 最後まで気道とにらめっこな頸椎前方固定術」
Author:大谷 良江(東京医科歯科大学医学部附属病院 麻酔・蘇生・ペインクリニック科), 大畑 めぐみ
Source: LiSA (1340-8836)20巻3号 Page284-286(2013.03)


まさにその通りだと思います!!


☆☆☆
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