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とぜん2020.001

はじめに


院内でSARS-CoV-2感染が発覚した場合、待機患者がすでに入院中であれば、予定手術の扱いに困ると思います。

接触の距離によっては、たとえその時期に無症状でも、感染後の潜伏期間中ということがあり得るからです。

わたしは、予定はいったんすべてキャンセルしました。

潜伏期間中に全身麻酔を行って、肺炎症状が出た場合に患者さんがどうなってしまうのか、まったく予想がつかないからです。

そんな折、今日のm3のニュースで衝撃的な記事が掲載されておりました。

COVID-19潜伏期間中に待期的手術で2割が死亡

武漢の4病院からの後ろ向き研究


2割!!

ほんとですか!?

早速、文献をダウンロードして読んでみました。

「Clinical characteristics and outcomes of patients undergoing surgeries during the incubation period of COVID-19 infection」
スクリーンショット 2020-04-16 14.17.47


武漢大学人民病院の麻酔科からの報告です。

武漢の人民病院、中南病院、同済病院、中央病院で行われた4施設の後ろ向き研究です。

2020年1月1日から2月5日にかけてCOVID-19潜伏期間中に待期的手術を施行した34例の臨床データを解析しています。

もちろん、手術のときはSARS-CoV-2に感染しているとはわかっていません。

つまり、無症状のまま手術を受けた患者37人が手術後に症状を発現し、WHO暫定ガイダンスに従ってCOVID-19と診断されております。

手術がCOVID-19の進行を加速&悪化させる可能性


まず、このFigureをみてください。
スクリーンショット 2020-04-16 15.07.53


入院から手術までの期間の中央値は2.5日です。

そして、手術後、最初の症状までの期間の中央値は2.5日。

最初の症状から呼吸困難までは4.5日。

呼吸困難からわずか2日でARDS。

その5日後に死亡。

いわゆる通常のCOVID-19の経過と比べると、早すぎます!

本文の考察にも記載されておりますが、この研究のデータは、手術がCOVID-19の進行を加速ならびに悪化させる可能性があることを示唆しています。

4割でICU必要、その半分が死亡


COVID-19症例の後ろ向き研究なので、全症例で、手術後にCOVID-19肺炎を来しております。

頻度の高い症状順に、
・発熱(31例、91.2%)
・倦怠感(25例、73.5%)
・乾性咳嗽(18例、52.9%)
です。

そのうち、15例(44.1%)が病状悪化のためICU管理が必要、
ICU管理しても結局7例(全体の20.6%)が死亡。

という結果でした。

恐ろしすぎます。

本日のまとめ


本文では、
・定期手術を行う前に新型コロナウイルス感染症を除外しておくことが必要
・感染の可能性あるならば、一定期間(WHOが推奨する14日間など)隔離しておくことが重要
と締めくくられています。

私見ですが、新型コロナウィルス感染症の早期終息は困難です。

ワクチンが完成するまでは、感染しないように接触をかなり厳格に制限した生活を続けていくことになるのではないでしょうか。

感染の流行に応じて、段階的にいろいろ解除されていくなかで、定期手術の術前検査には、SARS-CoV-19が必須となりそうです。

PCRとCTが現実的でしょうか。

陽性の可能性あるなかで、潜伏期間中に手術を行うことはかなりのハイリスクになりそうです。