頚椎椎弓形成術後の硬膜外ドレーンの管理。本当に大事な3つのポイント
スポンサードリンク
頚椎椎弓形成術は「頸髄の圧迫を除去するために脊柱管を拡大すること」
が手術の目的です。
ところが、せっかく除圧したスペースに術後血腫が貯留してしまうと
いわゆる術後急性硬膜外血腫となってしまいます。
処置が遅れると永続的な頸髄損傷に発展してしまいます。
よって早期発見が最重要事項となります。
実際は看護師さんに頼っている
血腫貯留を防ぐために
術後には硬膜外ドレーンを留置して帰室してくることが一般的です。
そして多くの場合、硬膜外血腫に一番早く気づくのは看護師さんです。
なぜか。
それは看護師さんがつきっきりで患者さんの状況を観察してくれているからです。
ドレーンの管理について、看護師さんから質問が多いのでまとめたいと思います。
大切なことはドレーンの量ではない
ドレーンについては、たいていの場合、
①totalの量
②時間に対してどのくらい流出しているか
③そして色調について
指示を出します。
具体的には
①totalで150ml超えたら一度コールください、とか
②2時間毎測定で、40cc超えるようならコールください、とか
③色調は、血清のものが漿液性に変化するようなら(髄液漏)コールください、とか
です。
数字は指示が出しやすいし、客観的に判断しやすいのですが
数字にばかり注意が向かってしまうのはいけません。
もっとも大事なことは患者さんの状態です。
ここをしっかり評価できていなければ
数字はあまり意味を持たないのです。
本当に大事な3つのポイント
先にも記述したように、
ドレーンの目的は硬膜外血腫の予防です。
Q.「硬膜外血腫が貯留したらどうなりますか?」
A.「神経症状が悪化します。四肢麻痺が生じてしまいます。」
それで、いちおう正解なのですが、
麻痺が出ています、ではもう既に緊急事態です。
その前に患者さんに起こっている変化を捉えなければなりません。
硬膜外血腫の一番の症状は痛みです。
血腫が貯留したら通常は、まず激烈な痛みが生じます。
よって大事なことはドレーンの数字ではなく、患者さんの様子です。
もっとも大事な3つのポイントは、
術後疼痛がどのように変化しているか、
です。
①帰室してから徐々に軽減している
→経過観察でよい
②帰室してから、いったん軽減したのが悪化してきている
→おかしいな、このままで大丈夫?
③帰室後からもどんどん悪化している
→おかしいぞ!
3つのポイントにあわせて起こる変化
バイタル(血圧や心拍数、呼吸回数など)はこの3つのポイントによって
だいたい次のように変動します。
①→ 変動なし。安定。
②→ 平静だったのがその後、血圧や心拍数が上昇、呼吸も苦痛様で回数上昇
③→ 帰室後からまったく安定しない、不安定。
鎮痛剤やPCAの自己ボーラス量は、
①→ 一定間隔。あるいは徐々に回数が減っていく、効果ある時間は比較的安眠。
②→ 徐々に回数が増えていく、安静が保てない
③→ 全く安静が保てない、耐え難い苦痛の訴え、叫び
と変化しているはずです。
その状態把握のもとで、ドレーンを観察します。
観察項目として、
1)指示にある全体量や、増加量、色調
2)ガーゼが血液で汚染されていないか
3)創部の腫脹や圧痛がないか
4)閉塞がないか
5)抜けていないか
を見ます。
どうですか?
ドレーンの量の指示なんて、ほんの一部の観察項目でしかないことがわかりますよね。
ドレーンの指示にかからないから。は危険
ポイント②、③の状態の患者さんをなんの心配なしに
「ドレーンに指示にひっかからないから」と
そのまま経過観察していくと
激しい痛みから、新しい神経症状の出現に発展していくことになります。
創部の痛みが上肢あるいは下肢のしびれや痛みなどの感覚障害に、
さらに放置すれば筋力低下、麻痺に、
といった具合です。
③の状況はかなり緊迫しているので、
主治医は危機感を持たなければなりませんし、
仮に危機感を持っていないようであれば
スタッフから医師に積極的に危機感を持たせなければなりません。
あっという間に頸髄損傷に達してしまう可能性があります。
そうです。
強調したいのは、
ドレーンの数値の指示はあくまで、観察項目の一部分であって、
「指示にひっかからないから患者さんの苦しさを静観」というのはダメです。
ドレーンの数字にばかり注意がいくのは本末転倒、
患者さんの状況をしっかり把握することが最重要事項です。
もちろん、患者さん側の問題として
肝臓疾患の既往や服薬で出血傾向にあるかどうかの把握も大事です。
重ねて申しますが、
「麻痺がでてきました」
これはもう緊急事態です。
今度は頚椎前方除圧固定術の硬膜外ドレーンについてもまとめますね。
使い方がいまいちよくわからないPeing質問箱ですが、手術室看護師さんからご質問を頂きました。
— とぜんな脊椎外科医@四つ葉スパインクリニック (@yotsuba_spine) August 15, 2019
C2 dome laminectomy時に硬膜損傷を起こしたあとの
・術中の処置
・術後の病棟Nsの指示
についてです。https://t.co/x4hRCgDyOU
★★★
看護師さん待望の一冊。
脊椎疾患について豊富な解説が満載です。
@yotsuba_spineさんをフォロー

コメント