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DF損傷について


DF損傷とは、Distraction-Flexion injuryの意で、
伸延力+屈曲位での損傷型です。
比較的頻度の高い損傷型で頚椎損傷全体の35%前後とされます。

最近経験したDF2の2症例について私見をまとめます。


2つの症例の提示


片側の椎間関節脱臼;Unilateral facet interlockingを呈しています。
いわゆるDF2: destruction-flexion stage2です。

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まずは頭蓋直達牽引にて整復を試みます。

脱臼が無事整復されたら


整復が可能だった場合、
外傷性の椎間板ヘルニアを呈している可能性があるので
MRIを撮像することが望ましいです。

そして、手術のストラテジーとしては、
①ヘルニアを呈しており、除圧が必要

前からplateを併用して除圧固定

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②ヘルニアの除圧が不要

後方からCPS固定
(この症例は椎弓形成術も一緒におこないました)

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が今のところ、一番確実かと思います。

脱臼が整復されないなら


整復が困難な場合は速やかに手術がよいでしょう。
後方アプローチで整復固定を行うのが一般的です。

脱臼した上関節突起を切除することで整復が可能ですが、
その際は椎間板ヘルニアが危険なので
椎間板に対して平行に後方牽引をかけないように注意が必要です。

得意な方法で、は?


わたしが重要と思うことは、
得意なアプローチでいく
という考え方が先行してしまわないように
前方アプローチ、後方アプローチの学習、トレーニングを普段から積んで
どちらにも慣れておくことです。

後方のCPSであれば1椎間固定でよいのですが、
CPS刺入には、椎骨動脈損傷という致命的な合併症を伴います。
LMSであれば、脱臼、あるいは脱臼骨折したlateral massに、screwが効くかどうか
ということもあり1椎間で済ませられないことも考えなければならないと思います。
前方であれば
血腫の問題や気管内挿管、気管切開などの問題があるでしょう。

得意なアプローチの考えが先行してしまうと、
治療方法が固定され、個々の病態に対して柔軟に対応しにくい恐れがあるのではないでしょうか。

しかし、かといって不得意なことをして、
手術が致命的な合併症の引き金になってしまうようであれば
まったく本末転倒、ということになります。


普段から学習し続けることが重要


普段から学びの姿勢をもって
具体的にはcadaverなどの機会は、積極的に得ることで
前方でも後方でも柔軟に判断できるように日々研鑽を積んでおくこと
外科医にはそれしかありません。