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頚椎症性脊髄症


頚椎症性脊髄症とは
加齢性変化のために変形した頚椎椎体や椎間板、黄色靭帯などによって
頸髄あるいは神経根が圧迫を受けるために生じた神経症状のことです。
加齢性変化は病気ではなく、生理現象で、いわば必然の変化です。

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症状と判定基準


具体的な症状は、
・手足のしびれ
・手や足の細かい作業ができなくなる
(お箸やボタン、書字がうまくいかない)
(手すりがないと階段がうまく登り降りできない、杖がないと足がつっかかって転びそうになる)
・やがて尿や便の調整がうまくいかなくなる
などの症状が出てきます。

その症状の程度を、17点満点として、
日本整形外科学会頸髄症判定基準
JOA score
というものを用いて判断しています。
共通言語で、重症度がわかる優れた基準です。

手術適応は?


それでは、手術適応は何点か?
つまり、何点になったら手術をした方がいいのか?
ということは患者さんにとって一番気になるところかと思います。

実際には、答えはないのです。

「頸髄の圧迫がひどいから、放っておくと寝たきりになりますよ」

真実なのでしょうか?
そのすべてが真実というわけではありません。
ただ、10数%の患者さんで悪化していくことは事実です。

頚椎症による神経症状には波があります。
すなわち、いい時もあれば悪い時もあるのです。
そして、
そのまま横ばいの人もいれば、
確かに徐々に悪化していく人もおります。

なぜ悪化するのか、なぜ悪化せずに横ばいなのか?
明確な判断材料はないのが現実です。

だからこそ、外来でお付き合いしながら悪化傾向にあるかどうか判断する必要があります。

もし患者さんが、
自分の症状の悪化を自覚しているならば、
そして悪化の症状のために、
患者さんの仕事や生活の質までもが悪化していることを自覚するならば
わたしは、積極的に手術を考えます。

JOA何点まで投薬で頑張るか?
基本的に10点を切ると生活の何かに介護が必要になってきます。
そうなる前に手術をしておきたいと思っているからです。

頸髄症の改善度は決して高くないからです。

患者さんひとりひとりの生活を考える


ただし、答えはない
なぜなら患者さん個々で過ごしている生活のスタイルがひとりひとりで異なるからです。

だからこそ
漫然と投薬加療で保存でみるのではなく、
その患者さんがどのような生活を行っているのかを把握して、
どのような症状になると不自由が生じてくるのか
しっかり話し合いをしながら、手術適応を決めるべきだと思います。

中枢神経の改善が悪いのは事実ですが、
「画像上、頸髄の圧迫が高度だから」という理由のみで、
「頚髄症が悪化することを予防しましょう!」
という考えを治療の中心に添えて手術適応を考えるのは
厳に慎むべきだと考えています。