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手術において術後の運動障害や感覚障害などは最小限に防がなければなりません。

これまでは、術者の経験と、勘に頼っておりました。
術中脊髄神経モニタリングの最重要事項は、
この部分を可視化することで、だれでも防ぐことができるようにしたい、
ということでしょう。

モニタリングは運動モニターと感覚モニターがあり、
刺激電極の場所
と、
記録する場所
で呼称されます。

今回は一般的な運動モニターについてのことはじめと致します。
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MEP


一般的に、
MEPといえば、Br-MsEP
を指します。

Br: Brain=脳 
を刺激して
Ms: Muscle=筋
でevoked=誘発された
potential=電位
を拾う、という意味です。

・感度はほぼ100%で、multiple channelで多くの筋を検出可能
一方、
・偽陽性率が高い・・・つまり、電位が落ちたからといって、必ずしも麻痺が生じるわけではない
・検査中は術中操作を中断
・麻酔の影響を受けやすい
といった面もあります。

根障害を精密にモニターするのは難しく、
あくまで脊髄障害のモニターです。


D-wave


Br-SCEPで得られる波形の一部です。
Br: Brain=脳
を刺激して
SC: spinal cord=脊髄
でevoked potentialを記録する運動モニターです。

D(direct)-waveは、皮質下の錐体路ニューロンが直接刺激された電位
I(indirect)-waveは、皮質内のシナプスを介して錐体路ニューロンが興奮させられた電位
とされます。
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・MEPで拾えない麻痺が強い症例でも安定した波形が得られる
・特異度と信頼性が高い
のがメリットです。
一方で、
・電位が落ちた事実があっても、どの筋が麻痺しているか、同定が不可能
tube電極なので
・波形導出が困難な時がある・・・とくに中下位胸椎になってくると記録電極が挿入困難です。
・硬膜外にtube挿入が必要
・経皮はめんどう
です。


術中脊髄神経モニタリングの課題


脊椎脊髄手術において、術後の運動麻痺や感覚障害は当然起こってほしくありません。
しかし、モニタリングはまだ、完全ではありません。
MEPやD-waveをそれぞれsingle monitorで用いるのではなくて
組み合わせが必要です。
SEPや他の脊髄誘発電位もあり、
どの疾患によってどのモニタリングの組み合わせがよいか
などの解決しなければならない課題もまだまだあります。
また、なるべく多チャンネルでfalse negativeを防ぐことも重要です。
アラームポイントの設定や、
最適なチャンネルの数、
もともとの麻痺の強さでの反応の違い
など、もっともっと改善が必要な点があり、
それらが解決されることでさらに安全性が高まることでしょう。

次回は感覚誘発電位のことはじめです。