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S.G.H:Singapore General Hospitalに手術研修に来ています。

初日はオペ見学とレクチャーでした。

2症例見学の予定だったのですが、諸事情で、残念ながら1例となりました。
L4/5レベルのほぼgrade2の変性すべり症の脊柱管狭窄ならびに両側の椎間孔狭窄に対して
XLIF1椎間によるindirect decompressionを施行されました。
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XLIF cageは非常に大きいのが特徴です。
どのように骨移植をするのか興味がありました。

術前のカンファレンスではBNPを入れる、といっていましたが、
NuVasive社製の同種骨を移植しました。
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同種骨移植について


同種骨とは自家骨と異なり、
他人の骨を使わせてもらう、ということです。

製品化されているところがすごいですね。
なんでも、シンガポールの医療事情は完全にアメリカ式で、
アメリカのFDAで認可されているものであれば
シンガポールでもほぼ自動的に使用可能になる、ということでした。

日本の同種骨移植の事情


日本には同種骨の製品はありません。

日本での同種骨移植の事情は、というと、
生体からの骨と、死体からの骨とで扱いが異なります。

生体からの骨バンク
生体から骨バンクにストックする場合は、
通常、人工関節手術や人工骨頭手術での余剰骨を使用します。

2007年の日整会誌81巻第5号
整形外科移植に関するガイドライン
および
冷凍ボーンバンクマニュアル
に準じて採骨され、加温処理、冷凍処理されたものが
施設内で保存、使用されます。

よってどの施設でも同種骨採骨ならびに移植が可能なわけではありません。
わたしの施設では設備がないので、同種骨移植はできません。

遺体からの骨バンク


遺体から骨を採取する場合は、日本では臓器移植とみなされます。
日本組織移植学会ガイドラインのもと
移植コーディネーターの管理下に医療チームが採骨する、
という手順になります。

2011年の次点で、組織移植学会認定の骨バンクは
東海骨バンク、北里大学骨バンク、熊本医療病院骨バンク
の3つしかなく、
2015年が終わる現在でも、調べた限りでは変わりないみたいです(異なっていたらごめんなさい)。

同種骨移植の問題


同種骨移植の問題として
感染症疾患や、悪性腫瘍などの疾患を橋渡ししてしまうことがないか、
また、心情的にイヤ、とかあるいは宗教的に無理
とかいう問題もあります。

たしかに、赤の他人から骨を頂く、ということに抵抗感があるかもしれません。

同種骨が製品化されているのは、アメリカならではなのかもしれません。

今後の同種骨移植の必要性


しかし高齢化社会になり、今後も人工関節手術のみならず脊椎手術の数が増加して
さらにrevision surgeryの数も増えていけば、
腸骨からの自家骨採骨では追いつかないことは明白でしょう。
人工骨の進歩も大切ですが、同種骨のほうが骨誘導に優れています。
アメリカのように、製品化されればどの施設でも可能です。
いろいろ難しい問題があるでしょうが、、、

まとめ


海外研修では、手術手技ならず医療情勢も学ぶことができ、充実しています。

明日は解剖のLaboでbasicとadvanceのコースで実際に修練をしてきます。
楽しみです。

やはり海外研修に積極的に参加することは普段学べないことを肌で実感できるので
おすすめです。