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腰椎の固定手術治療のひとつである、
低侵襲腰椎前方椎体間固定術(XLIF)
についてまとめました。

手術の目的


変形性腰椎症により椎間板や関節の機能不全が生じると、
腰椎の前後のずれ、左右のずれ、ゆがみをきたして
腰部の神経が圧迫されてしまいます。

すると、腰痛や下肢のしびれ、痛みなどで日常生活が困難となります。

保存加療によって症状の改善を試みるのですが、
どうしても改善が望めない場合は手術加療を行います。

低侵襲腰椎前方椎体間固定術とは、
1. 脇腹を3cm程度切開して、
2. 器具を挿入し腰椎の前方にアプローチして、
3. 機能不全に陥ってゆがみの原因になっている椎間板を切除し、
4. ケージとよばれる椎間板の代わりになるものに入れ替え、
5. 上下の椎体がぐらぐらしないように固定する手術です。

固定後にさらに腰椎を補強するため、後方から椎体にネジ固定を行います。

変性した椎間板の代わりに、大きなケージが入ることにより
腰椎の並びが整うことによって、
間接的に神経の圧迫が解除されます。
圧迫が解除され、不安定な腰椎が安定化すると、
馬尾神経の血流が整うので、回復力が残っている神経の機能改善が期待されます。

狭窄が高度で、圧迫が解除されない場合は
二期的に後方からアプローチして、
直接神経の圧迫を除去する手術
を追加することがあります。
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手術の流れ


1. 全身麻酔で眠ってもらいます。
2. その後、スタッフで体の向きを横向きに変更します。
3. 脇腹に3cm程度の皮膚切開を行い、
後腹膜腔を経由して、椎体の前方にアプローチし、
機能不全に陥った椎間板を切除し、ケージと入れ替えます。
4. 閉創した後、スタッフで体の向きを今度は腹ばいにします。
5. 後方からネジ固定を追加して手術は終了です。
6. 体の向きを最初のように仰向けにして麻酔から目覚めてもらいます。

手術アプローチは、腰椎のゆがみを考慮して個々の病態に応じて決定します。

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メリット


傷が小さいので出血量を最低限に抑えることができます。
脊椎の後方要素を構成する脊柱起立筋群や椎間関節を切開しないで温存することができます。
変性した椎間板を大きなケージと入れ替えるため、
椎間板腔が復元され、背骨の姿勢の歪みを矯正・整復することが可能です。

デメリット


ケージの挿入の際に膝や大腿を持ち上げる大腰筋からアプローチするため、
約20%の確率で術後一過性に大腿部の筋力低下や感覚障害が出現します。
極めてまれですが、
腎臓、尿管、大腸などの後腹膜腔臓器の損傷や、動静脈損傷の可能性があります。
ほかの手術の合併症として、
硬膜損傷、神経損傷、感染症、出血、術後血腫などが
約1%程度にあります。
後腹膜腔に血腫が貯留する場合は危険なことがあります。
深部静脈血栓や心・脳血管の血栓などは致命的になりえます。
ゆがんだ姿勢を矯正・整復することで間接的に圧迫が解除されますが、
もともとの狭窄が高度で除圧効果に乏しい場合は、
後方から直接除圧操作を追加することがあります。

長期的な予後


加齢性変化は生理現象です。
加齢現象や長期的な負荷がかかることにより、術後も脊椎は変形し続けます。
手術では変性した椎間板をケージに入れ替えて固定しておりますので、
その上下の椎間に負担がかかると、椎間板膨隆や、関節の変形、すべり症が進行する場合があります。その際は追加の手術が必要になることがあります。

手術治療の流れ


持病や内服薬の種類によって術前の入院期間が異なります。
通常は手術の前日に入院です。
神経障害が生活に支障ない程度であれば術後2週間の入院期間が目安です。
神経障害が強く支障がある場合はリハビリが必要です。
積極的なリハビリ加療を行うためにリハビリ病院への転院調整を行います。
術後は腰椎を保護するために硬性コルセットを約3ヵ月程度装着します。

・手術前日   術前の準備
・手術当日   手術 
・術後1日   食事開始 コルセット下にベッド離床開始
・術後2日   リハビリ開始
・術後14日   自宅退院あるいはリハビリ病院転院
・術後4週あるいはリハビリ病院退院後   外来受診

まとめ


以上、
低侵襲腰椎前方椎体間固定術(XLIF)
についてまとめました。

一般的な予定です。個人差があることをご了承ください。

★★★
MIStに関わろうとしている脊椎外科医へ。手技に関する待望のバイブルが完成です。