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頚椎の手術治療のひとつ、
頚椎前方除圧固定術についてまとめました。

手術の目的


頚椎の加齢性変化による骨の棘や椎間板ヘルニアのために、
頸髄の圧迫あるいは神経根の圧迫を生じて
・上肢や下肢のしびれや痛みが出現している
・箸やボタンを扱うような指の細かい動作がしにくい
・歩行がうまくできなくて階段の昇り降りに手すりが必要
・さらには平地でも杖が必要
・排泄の調整が困難となっている場合、

あるいは一側上肢の激しい痛みやしびれのために生活がままならないような症状が出ている状態で、
いくら内服加療を行っても改善が望めない場合
徐々に悪化している場合に
手術加療を行います。

頚椎前方除圧固定術とは、
頚部の前面を切開し、
気管や食道を避けるように椎体の前面にアプローチし、
圧迫の原因となっている骨の棘や変性脱出した椎間板を切除し、
椎体間に人工骨や金属のボックス型のケージや円筒形のケージあるいは自分の骨盤の骨を
挿入(インプラントといいます)して、
除圧した後に椎体同士がぐらぐらしないように固定する手術です。

場合によっては椎体ごと切除することもあります。

圧迫が解除されると、回復力が残っている神経の機能の改善が期待されます。
神経根による痛みは充分な改善が望めますが、
中枢神経である頸髄の回復力はあまり強いものではありません。

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手術の流れ


1. 全身麻酔で眠ってもらいます。
2. 手術中に体動があると危険なので、手術台と頭とを固定するピンを用います。
3. 首の前面に侵入側から真ん中にかけて約4~5cmの皮膚切開を行い、
血管、気管、食道を避けて椎体前面にアプローチします。
4. 顕微鏡を用いて視野を拡大し、変性した椎間板や骨棘を除去して神経の圧迫を除去します。
5. ついで椎体間のスペースにインプラントを挿入して椎体間を固定します。
状況によって椎体の前面を金属プレートで固定します。
手術時間は、60~90分程度の見込みです。
椎体ごと切除が必要な場合は3時間程度要します。
6. 閉創し、頭を固定するピンを外して麻酔から目覚めてもらいます。

手術アプローチやインプラントは、症状や圧迫の強い側、骨質などを考慮して、
個々の病態に応じて決定します。

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顕微鏡下手術のメリット


術野が拡大されるため、頸髄損傷のリスクを最小限に抑えることができます。
肉眼でとらえにくいレベルでの出血まで丁寧に処置できるため、
出血量を最低限に抑えることができます。
前方固定手術は神経の除圧のみならず姿勢の矯正固定ができることがメリットです。

デメリット


さまざまな程度で術後に肩こりや頚部周囲の痛みが残存することがあります。
頚部の前面を触るため、術後飲み込みに違和感や声のかすれを自覚することがあります。
多くは一過性の症状です。

椎体の前面に血腫が貯留することがもっとも心配な合併症です。
息の通り道である気管が閉塞すると呼吸ができなくなるからです。

そのほか原因は不明ですが術後に上肢が上げにくくなることがあります。
この症状も大部分は一過性の症状です。

その他手術の合併症として、
血管損傷、気管損傷、食道損傷、硬膜損傷、神経損傷、感染症、出血
などがあげられます。
ほか、一過性に感覚や運動の障害を来すことがあります。

自分の骨盤の骨を用いた場合は、採骨部の痛みが生じることがあります。

深部静脈血栓や心・脳血管の血栓などは致命的になりえます。

長期的な予後


固定椎間が充分に固定されないと不安定状態が持続してしまいます。
インプラントが逸脱してしまう恐れがあります。
カラーの装着は約3~4週間が目安です。

また、加齢性変化は生理現象です。
加齢現象や長期的な負荷がかかることにより、術後も脊椎は変形し続けます。
頚椎前方除圧固定術では上下の椎体間に負担がかかることで
経年変化によって、椎間板の膨隆、黄色靭帯の肥厚などが進行し、再狭窄をきたす場合があります。
その際は除圧術や固定術の追加が必要になることがあります。

手術治療の流れ


持病や内服薬の種類によって術前の入院期間が異なります。
通常は手術の前日に入院です。

・手術前日   術前の準備
・手術当日   手術 
・術後1日   食事開始 カラー装着のもとベッド離床開始
・術後2日   リハビリ開始
・術後14日   自宅退院あるいはリハビリ病院転院

・術後4週あるいはリハビリ病院退院後   外来受診

まとめ


以上、頚椎前方除圧固定術についてまとめました。
一般的な予定です。個人差があることをご了承ください。

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