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70台の男性でわざわざ他県から来院されました。

病歴


平成25年くらいから手足がしびれはじめた。
徐々に上肢下肢に増悪した。

痛くはないんだといわれ、
問診票のシェーマをみると、、、

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ちょっとぞっとしますね。構えてしまいますよね。

すこし精神的な要素もありそうと想像してしまいがちな絵です。

自宅近くの有名整形外科で頚椎MRI、腰椎MRI
さらには自宅近くの有名血管外科でABI
を施行されたそうです。

血管に問題なく、
“頚椎は年齢相応なので今手術する必要はない、
悪化したら来なさい”

平成25年からのしびれは、どんどん悪化していますが
結局、その医療機関は受診されていないそうです。

わざわざ遠方の当院を受診された、とのことでした。

既往症


既往には胃がん、とだけ記載してありました。

詳細に尋ねると、
平成20年に胃がんの診断で、胃全摘
平成25年くらいから手足のしびれ出現
平成26年くらいで胃がんの定期通院終了
以降、特別採血は受けていない、とのこと。

身体所見・画像所見


身体所見の特徴は
・安静時の上下肢しびれ、とくに手足に強い
・労作安静で増悪寛解なし
・腱反射消失
・筋力低下なし

鍛えなければ、との意識で一日一時間散歩しているような生活を送っています。

他県遠方からの来院のため、
時間の都合でMRIを撮像することはできませんでしたが、
頚椎CTでは脊柱の前後径は一番狭いところでせいぜい12mmでした。

採血しても結果説明のために、
後日ふたたび他県から来てもらうのも申し訳ないと思いました。

調べてみたら自宅近くに神経内科を有する病院がありましたので、
ビタミンB12欠乏症の末梢性多発神経炎を強く疑い紹介状を作成いたしました。

ビタミンB12欠乏症について


ビタミンB12(メコバラミン)は葉酸とともに、
細胞の遺伝物質であるDNA(デオキシリボ核酸)の合成や
赤血球の形成に必要なビタミンです。
そして、正常な神経機能にも必要です。

よってビタミンB12が欠乏すると
・貧血
・重度になると神経障害(手足のじんじん感、感覚消失、筋力低下、反射消失、歩行困難)
・さらに重度になると精神症状(錯乱、認知症)
が出現します。

ビタミンB12は通常は十分量肝臓に蓄えられています。
通常、使いきるまで約3〜5年分程度、蓄えられているといいます。

ビタミンB12は小腸から大腸へとつながるいわゆる回腸部で吸収されますが、
胃で産生されるタンパク質である内因子と結合しないと吸収されません。

よって、内因子がないと、ビタミンB12は腸を通過して便と一緒に排出されてしまうわけです。

胃全摘を受けると、ビタミンB12の吸収障害が起こるので、
3~5年分の蓄えがなくなると、ビタミンB12欠乏症をきたしてしまいます。

血液検査で
・血中ビタミンB12濃度
・葉酸(巨赤芽球性貧血除外のため)
をチェックします。

神経伝達速度を測定することもあります。

胃全摘後では、ビタミンB12の内服経口摂取では効果が期待できず、点滴静注を受けます。

思わず医療者がぎょっと構えてしまうようなシェーマでしたが
改善してくれることを願います。

★★★
医学生、研修医のための、、、とはありますが、簡潔であり詳細。図や画像の見やすさも非常によいです。書評の高さは群を抜いています!


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