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はじめに


救急病院に勤務しているからでしょうが
椎体骨折に対して考えさせられることが多いです。

椎体骨折、とくに破裂骨折の分類や、治療についてまとめました。

わかりやすいthree column theory


破裂骨折とは、
そもそもは、超有名な
Denisのthree column theoryに基づいて分類した骨折型です。
脊椎を3つの支柱に分けて考えています。
001


・Anterior column:前縦靭帯、椎体前壁、椎間板腹側部
・Middle column:椎体後壁、椎間板背側部、後縦靭帯
・Posterior column:椎間関節、関節包、黄色靭帯、椎弓、棘突起、棘間靭帯、棘上靭帯

にわけて、A & Mの両方の破損がある場合に破裂骨折(burst fracture)、とします。

002


simpleだけど、もう少し、議論が必要


単純で、非常にわかりやすいのですが、Simpleすぎて困ることがあります。
それは、
これでは骨折の重症度、不安定性の程度、治療方針が定まらない
ということです。

つまりひとくちに破裂骨折を受傷されました、といっても、
全例手術が必要なわけではなく、ブレースによる保存加療ですむケースもあるわけです。
手術が必要とした場合には、
今度は、
椎体の前方再建が必要な場合や、
後方固定だけすむ場合もあり、
はたまた前方後方の両方の再建が必要な場合もあるわけです。

とくに後方要素の損傷を伴うような屈曲・伸延損傷を合併していると
かたや破裂骨折、かたや屈曲・伸延損傷、と区別がつかなくなってしまいます。

Denis分類の改良バージョン


そこで骨折の分類をもうすこし詳しくしたのが
金田分類
です。
003


いわずもがな、北海道大学の巨匠、いえ、世界のspinal surgeonの巨匠です。
3型と4型の区別がつきにくいのですが、
破裂骨折と屈曲・伸延損傷の複合損傷を分類なされており、
Denisの分類から、よりわかりやすくなっております。

つまり後方要素の合併損傷の程度の評価が重要、ということです。
単純に破裂骨折とするだけでは現場の治療に即さないのですね。

後方要素損傷に基づいた種市分類


さらに同じく巨匠であられる獨協大学の種市先生が、後方要素損傷の程度に基いて
次のような分類をされております。
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非常にわかりやすいです。
Ⅰ型、Ⅱ型で保存加療か、前方手術か、後方手術かの選択が必要です。

椎体破壊の評価には


さらに、Load Sharing Classificationで椎体の破壊の程度を評価すると
より、わかりやすく理解できるのではないでしょうか?
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当時と現在の治療法の差


ただしこれらを分類した時の治療法と現在のinstrumentationとに進歩による差が生じております。
後方からの低侵襲手術でも、椎体の整復がある程度可能となりました。

すなわち、後方手術からのligamentotaxisがあまり期待できなかったものが、
現在ではかなり期待できるようになっております。

個人的にはLSCで7〜8点くらいでも
場合によっては後方一期的手術でできると思っています。
もちろん二期的前方再建のinformed consentは行っております。

まとめ


椎体骨折の評価法はさまざまです。
それは骨折の病態や程度が単純でないからです。

ポイントは

・three columnで考える
・後方要素を見逃さないようにしっかり評価する
・椎体の破壊の程度はLSCが便利
・ただし前時代的な治療方針ではなく、治療法の進歩をめざす

ということではないでしょうか?

ほかにも、Vaccaro先生のTLILCS、新AO分類がありますが、
今日は割愛させていただきます。
またの機会に記事に致します。

★★★★★
星地先生の経験と知識が余すところなく収められております。教科書らしくない教科書で、非常にわかりやすい。そして、なにより面白いです。絶対に一読すべきテキストです。