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はじめに


側方アプローチ(lateral lumbar interbody fusion: LLIF)
・XLIF extreme lateral lumbar inter-body fusion
・OLIF oblique lateral lumbar inter-body fusion
が本邦に導入されてから多くの脊椎外科医が側方アプローチを選択肢のひとつにするようになりました。

件数の伸びに違和感はあります


わたしとしてはこのすさまじい勢いでのLLIF手術件数の伸びに
いままでの治療はなんだったの?っと違和感を覚えてしまいます。

なぜこれまでの前方アプローチが減って
後方アプローチがメインストリームであったのに
また側方(前方)アプローチが増えてきたのでしょう?

安全か、といわれれば、後述するように、オープンの方に軍配があがるように思えます。

低侵襲にアプローチできるようになったから?
ligamentotaxisによる間接除圧効果?
椎体の矯正効果が得られるから?

XLIFが脊椎外科人生を変えてしまう衝撃であることには違いありません。

わたしはXLIFを行いますが、
小さい視野で容易に椎体にアクセスできるので
なにが危険なのかわからないまま手術が完遂してしまう
というのが正直な感想です。

出張XLIFでの出来事


さて、今回、出張でXLIFをお手つだいにいきました。
MOBで、隣接椎間障害をきたしたL1/2の再手術症例です。

高位でCT上、後腹膜腔すぐ近傍に腎臓と下行結腸があり
心配だったので、やや背側からアプローチしたのですが、
筋膜が邪魔してうまくいきませんでした。

以前、後腹膜腔を構成する膜についてまとめたのに、まだまだだな、と。

腹横筋膜の背側の折り返しで判断を迷いました。
少し前方に移動すると通常通り後腹膜腔に入ることができました。

オープンであれば、膜の構造の理解もなにも、いつの間にやら後腹膜腔に入っているのですが。

XLIFでは膜の構造の理解が重要


まとめると、XLIFでは筋膜の理解が重要です。
後傍腎腔に入るとは
腹横筋膜と腎筋膜後葉(Zuckerkandl筋膜)の間に入るということです。

頭側にいくと後腹膜腔が小さく、
腹横筋膜が外側円錐筋膜や腎筋膜とほぼ接しているような症例もあります。

腹横筋膜と思って
誤って外側円錐筋膜を破って入ってしまえば、結腸がある
誤って腎筋膜後葉を破って入ってしまえば、腎臓がある
誤ってさらに腎筋膜前葉を破って入ってしまえば、腎臓、腹壁がある
そんな危険が上位腰椎には余計あると思います。

まとめ


通常と異なる景色になった場合、
一度元に戻って判断をやり直すか、
一度元に戻って切開を大きくするか、

でないとXLIFでは大事故を起こしてしまうと思います。
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★★★
手術解剖学のバイブル。整形外科医の机には必ず置いてありますよね!