頚椎椎弓形成術後の車いす移動、要注意です。
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はじめに
下位頚椎やT1の棘突起の骨折の形態に
Clay-Shoveler’s fracture
というものがあります。
Clay-Shovelerは、いわゆるドカタ(土方)、という意味です。
Clay-Shoveler’s fractureについて
シャベルで土を掘ったり、雪かきをしたりするときに、
肩甲骨の動きで上肢帯筋にかなり強い張力がかかっているようです。
そのため、下位頚椎あるいはT1の棘突起が骨折してしまうのです。
わたしが経験したClay-Shoveler’s fractureは、薪割りをしていた際のものでした。
薪割りしていて、急に後頚部に痛みが走って受診され、
頚椎CTでC7棘突起骨折が判明しました。
頚椎椎弓形成術後の棘突起骨折
頚椎椎弓形成術では、C6/7部の除圧でC7椎弓頭側の部分切除を行うことがあります。
上肢帯筋付着部であるC7棘突起を温存することで、
術後の項部痛をなるべく減らしたい、という思いからです。
温存にこだわり、なおかつがんばって除圧しすぎると、
その部位から骨折してしまうことがあるのです。

この症例は、頚髄症に左C8のradicular painが合併し、
薬物加療で改善が得られないため、手術適応としました。
C7椎弓形成に左C7/T1のforaminotomyを追加した症例ですが、
その1ヵ月後に変形性膝関節症の手術を受けていたのです。
車いす移動に注意
免荷のため、車いすで行動していたのですが、
どうやら、そのときに骨折してしまったようです。
椎弓根まで及んでおりかなり強い力の関与が疑われます。
幸い疼痛はしばらくの経過で軽減しましたが、
なんともイヤな気持ちになりました。
まとめ
頚椎椎弓形成術後に後頚部痛や肩甲背部の痛みの訴えが会った場合は、
単なる術後の痛みと軽視せずに
棘突起骨折を疑って頚椎CTを撮像することをおすすめします。
頚椎Xpでは肩関節に遮られてC7やT1は可視されません。
また、車いす移動、あなどることなかれ、です。
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コメント
コメント一覧 (5)
頚椎症性脊髄症の為、椎弓形成術を受けました患者ですが、術後の治りが悪く、セカンドオピニオンを受けて、写真のようにC7の棘突起が椎弓ごと骨折してました。
手術で対応したとありますが、どのような手術でしょうか?
ご教示願います。
私の主治医は経験がないとの事で、薬物による保存療法を勧めてますが、不安定な棘突起が動くことによる激痛が収まるとも思えず、情報収集してます。
術後の骨折してしまうと、やはり手技に問題があると思わずにはいられないですね。
部分椎弓切除するくらいなら、棘突起切除の椎弓形成のほうがよいのでしょうか。
にしてもイカツイ骨折ですね。何とか予防できないものかと思います。
いつもいつも教訓あるコメントありがとうございます。
CTの撮像角度でちょうどT2椎体まで写っておりますが、
骨折した棘突起椎弓はT1のもので、尾側に牽引されています。
いわゆるクレイショベル骨折は棘突起の剥離骨折ですよね。
この症例の骨折は、椎弓部分切除後の医原性分離と考察しています。
そのストレスの原因が
膝関節術後の免荷による不慣れな車いす操作による上肢帯筋の張力かな、
と思い記事にした次第です。
きっとforaminotomyと称して椎弓部部分切除の範囲が大きかったのかな、
と反省しております。
外傷はないようでした。
コメントありがとうございます!
ショベルフラクチャーであれば棘突起骨折だと思いますが、牽引力でこんな折れ方しますかね?転倒して直接ぶつけたなどは患者さんが話していないだけの可能性もあるのではと思いました!