知りたいのはドレーンバッグ内の血腫量です!
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はじめに
脊椎診療をたちあげて3ヵ月が経ちました。
苦労は絶えません。
そんな先日のはなしです。
通常通りに手術を終えて
腰椎の2椎間除圧の手術を行いました。
比較的若年者であったので、棘突起を残して手術しました。
通常通り、術後硬膜外ドレーンを留置して帰室。
閉塞しやすい、との反対派もありますが、Jバックドレーンを用いております。
理由は、単純に、既存の採用品だから、です。
トラブルが多いようなら変えてもらおうと思っています。
この目盛りで血腫量をチェックしてもなかなか再現性がありませんよね。
そんな発言をしたら、病棟にドレーンの重量を測定する測りがあるというので、
この1ヵ月ちょっと測りで測定してもらっていました。
帰宅前回診時
手術が無事に終わって帰宅前に回診。
下肢神経症状のチェックをして、
ドレーン量は少量流出しているくらいでした(目視)。
患者さんは声掛けすると目覚めるくらいに程よく術後IV PCAの鎮痛が効いています。
新しい麻酔科の先生の素晴らしい腕に感激して帰宅しました。
深夜2時半のコール
深夜2時半に電話がなりました。
「ドレーンが200gを超えました」と。
そんなばかな?
まさか髄液漏かな、以前もあったな(このドレーンバッグ、髄液ですよ)
患者さん痛がってる?
「いえ、痛がっていません。」
しびれとか出てない?なにか悪くなっていませんか?
「いえ、ドレーンの指示(>200cc)にかかったのでコールしました。」
PCAフラッシュ何回くらいした?ボルタレン座薬は使用しましたか?
「ちょっと待って下さい。。。ゴソゴソ。。。
夕方にフラッシュしてその後はしていません。座薬も使用していません。」
なんか、おかしいな。。。
18-19時ころ(自分が帰宅したとき)のドレーンの量はいくつだった?
「160gくらいです。」
ベッドで横になって電話対応していましたが、ひっくり返りそうになりました。
ドレーンの総重量を単純に測定して、200gを超えたからコールした、と。。。
いや、血腫の量が200超えたら教えてね・・・
結局翌朝回診時のドレーン内の血腫は50cc程度で抜去しました。
気にしてほしいこと
・測りではかってもドレーン内の血腫量もせめて目視してほしい
・ドレーン量の指示にひっかかったと思う前にバイタル変化を気にしてほしい
・おなじく痛みの変化を気にしてほしい
・おなじく神経症状の変化を気にしてほしい
そういったことを複合した上でコールしてほしい
報告のポイント
以前にもドレーン管理について記事にしましたが(頸椎椎弓形成術の硬膜外ドレーンの管理)
結局、なんだかんだでドレーンの管理は看護師さんに頼っています。
指示は、どうしても数字で挙げてしまいます。
客観的で指示としてわかりやすいからですが、
それ以上に患者さんの容体の変化を見て欲しいです。
ドレーンの量はモニターのひとつにすぎません。
術後の痛みの変化、3つのポイント
術後の痛みの変化のポイント3つ。
①帰室してから徐々に軽減している →経過観察でよい
②帰室してから、いったん軽減したのが悪化してきている →おかしいな、このままで大丈夫?
③帰室後からもどんどん悪化している →これは絶対おかしいぞ!
バイタルの変化
バイタル(血圧や心拍数、呼吸回数など)はこの3つのポイントによって
だいたい次のように変動します。
①→ 変動なし。安定。
②→ 平静だったのがその後、血圧や心拍数が上昇、呼吸も苦痛様で回数上昇
③→ 帰室後からまったく安定しない、不安定。
鎮痛薬の量の変化
鎮痛剤やIV PCAの自己ボーラス量は、
①→ 一定間隔。あるいは徐々に回数が減っていく、効果ある時間は比較的安眠。
②→ 徐々に回数が増えていく、安静が保てない
③→ 全く安静が保てない、耐え難い苦痛の訴え、叫び
と変化します。
そういう変化の有無をもとにドレーンのチェック
そういった状況を確認しつつ、ドレーン量を観察します。
観察項目として、
1)指示にある全体量や、増加量、色調
2)ガーゼが血液で汚染されていないか
3)創部の腫脹や圧痛がないか
4)閉塞がないか
5)抜けていないか
などを見ます。
本日のまとめ
血腫の量が多くならなくたって悪化します。
血腫の量が多いなら、なおさら心配です。
もう一回勉強会ですわ。。。
使い方がいまいちよくわからないPeing質問箱ですが、手術室看護師さんからご質問を頂きました。
— とぜんな脊椎外科医@四つ葉スパインクリニック (@yotsuba_spine) August 15, 2019
C2 dome laminectomy時に硬膜損傷を起こしたあとの
・術中の処置
・術後の病棟Nsの指示
についてです。https://t.co/x4hRCgDyOU
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コメント
コメント一覧 (6)
お返事いただきまして誠に有難うございます。
SBドレーンでも良いと思いますし、施設見学で実際に使われていたところもありました。ドレナージは陰圧持続吸引を用いているところが多い印象です。なぜならばドレーンの目的の一番は硬膜外血腫の予防だからです。ただ硬膜損傷あるいは髄内腫瘍で硬膜切開を加えている場合は強い陰圧をかけてしまうと、髄液をジャンジャン吸引してしまうおそれがあります。小脳などに遠隔頭蓋内出血をきたしてしまいますので、髄液漏が予測される場合は強い陰圧での持続吸引はかけにくいです。脳室ドレナージにパックを用いて自然滴下にしていたのならば、髄液漏の心配があったのではないかと予想します。あくまで予想の範囲です、、、
感情が入ってしまうのも仕方ないので大丈夫です!
重ね重ねの質問で申し訳ないんですが…
jバックにしましたとあるんですが、
SBでも良かったりするんですか?
脳室ドレナージのパックをベッドの高さをゼロ点にしてとかのドレナージ方法とか…
使い分けがあるんでしょうか?
コメントいただき、ありがとうございます。るーさんがおっしゃるように、排液量が200gを超えたらコールしてほしかったのですが、Jバックの重さを含んだ数値での深夜のコールだったのですね。。。電話の音でこどもが泣いて起きてしまいました。今あらためて記事を読み直してみると感情があらわですね。すみません。
廃液量が200を超えたらってことですか?
この場合、jバックの重さを引かずにコールがあったってことでしょうか?
コメントありがとうございます。
電話の時はずっこけましたよ。さすがに。。。
この一件で少しずつでもステップアップして、脊椎診療が好きになってくれるように勉強会を重ねていきますよ(笑)