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はじめに


いま一番悩んでいる症例です。

骨折受傷後3ヵ月後に受診した80代の女性です。

転倒後の圧迫骨折の診断で入院のもと保存加療となりました。
痛みがそれなりに残っているにも関わらず
自宅退院を促され、その後外来通院となったそうです。

しかし遺残した腰痛がまだまだしんどいため
当科を初診したものです。

わずか3ヵ月の画像がこれです。

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たった3ヶ月の経過です。
下肢症状がないため早急に手術を要するわけではありませんが、、、
けっこうひどいですよね。

まずPTH製剤を導入し、もともとのコルセット加療を再開しました。

圧迫骨折?


ただ画像をみると、これ圧迫骨折でよいのでしょうか?
というか単純な骨粗鬆症性椎体骨折なのでしょうか?

CTおよびMRIではT12棘突起の損傷を認めます。

やはり単なる骨粗鬆症性椎体骨折ではないようです。

新AO分類と診断のアルゴリズムについて以前記事にしました。
(新AO分類についてのまとめ)

胸腰椎損傷では後方要素の損傷を見逃してはならないです

胸腰椎損傷の分類のためのアルゴリズム


新AOの診断アルゴリズムによれば
まず脱臼や偏位がないかどうかをチェックし、
ついで後方要素の損傷がないかどうかをチェックします。
そのあとで椎体の損傷の程度をチェックします。
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この症例は後方の骨要素の損傷を認めるため
Type B1のPure-transosseous disruptionです。
いわゆるChance type fractureです。

仮に初期に診断がついたとしても
後方要素が損傷されているためBKPでは治療できないと思います。

HA blockによる椎体形成と後側方固定がもっとも低侵襲ではないかと思いますが、
short fusionがよいかlongがよいのか、経皮的がよいのか、
オープンでネスプロンテープやフックを併用したほうがいいのか、
骨粗鬆症が関与してくると何が正解かはわかりません。

治療の経過が新たなディスカッションを産む


ただし、後方要素の損傷を見逃し、単純な椎体骨折として処理してしまうのと
ディスカッションを重ねて手術をした結果、failure になるのとでは過程が全く異なります。

failureを来したなら、この結果を研究会などで持ち寄り、
他道場(他施設)の先生とさらにディスカッションで深める事も出来ますし、
複数例に及ぶなら、結果をcase seriesとして発表、論文化すると
また新たなディスカッションを産むことができます。

医学の発展に寄与する建設的な過程が生じます。
見逃してしまうこととまったく正反対です。

胸腰椎損傷では後方要素の損傷を見逃さないようにする


よって、繰り返しになりますが、
胸腰椎損傷症例では、後方要素の損傷を見逃さないようにしましょう。

高齢者だからといって安易に骨粗鬆症性椎体骨折(圧迫骨折)として、
椎体だけの要素に注目することは容易です。

そうではなくて、アルゴリズムにしたがって
後方要素の損傷の有無にしっかり着目するようにしましょう。

疑わしいときは画像フォローが大切です。

本日のまとめ


今回の記事で後方要素に目がいくようになったでしょうか。

さて、この症例が今後、神経症状を呈するようになったらどうすべきか。。。

X coreは支柱としては面積がもっとも大きいですが骨移植に不安があります。
しかしもっとも低侵襲かと思います。

どうすべきものか。。。

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