パーキンソン病の症状・診断についてのまとめ。Parkinson’s complexを理解する。
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はじめに
脊椎診療を受診される動機になる代表的な症候に
痛みと歩行障害があります。
受付で相談すると、脊椎科に相談してはいかがでしょう、と。
その中に今回まとめたパーキンソン病が潜んでいます。
実はパーキンソン病の方に対する脊椎手術の成績はあまりよくありません。
最初から診断がついている場合はともかく、
診察当時はパーキンソン病の診断がついておらず、
術後の経過観察中に診断がつくこともあります。
手術当時は発症していなかったのか?
といわれれば、そうでなく診断がついていなかった、というケースも有るはずです。
そこで症状、診断についてまとめました。
病態
パーキンソン病は
中脳の黒質-線条体系のドーパミン神経細胞の特異的な変性・脱落によって生じる進行性の神経疾患
です。
通常は神経内科や脳神経外科がカバーしてくださいます。
わたしが医師になりたてのころは、
無動・寡動、筋強剛、静止時振戦、姿勢保持障害といった
運動症状を呈する疾患として捉えておりました。
近年ではさまざまな非運動症状を呈することが明らかとなって、
Parkinson’s Complexという、
運動障害と非運動障害が総合的に症状群を形成している
という概念が提唱されております。
運動症状と非運動症状にわけてまとめます。
運動症状について
特徴的な運動症状は、パーキンソニズムといわれます。
左右差を認めることが多く、以下の3つが超有名です。
1)寡動・無動
2)筋固縮・筋強剛
3)静止時振戦
1)寡動(bradykinesia)・無動(akinesia)
動作が緩慢、つまり全体的な動作の速度が遅くなることです。
動作の開始が鈍く、繰り返し動作が徐々に小さくなります。
運動の幅と量が減少する、と表現されます。
・すくみ足(frozen gait)・・・歩き出しが鈍く最初の一歩がうまくだせない
・加速歩行・・・一歩の繰り返しがだんだん小さくなって前にたおれそうになる
・仮面様顔貌(masked face)・・・表情の動きの変化がとぼしい
・書字は小文字となり、
・声は小さく単調になります(構語緩慢 bradylalia)。
2)筋固縮・筋強剛 (rigidity)
歯車様強剛(cogwheel rigidity)、と表現される筋の緊張が持続している状態です。
他動的に腕を動かしたときにうまく力を抜くことができないので、
がくがくとした強弱の硬さの変化を感じます。
それに対して、一定の抵抗に感じる強剛を鉛管様強剛(lead-pipe rigidity)といいますが、
これもまた少なくないとされます。
・Froment sign・・・手首の固化徴候で、軽い程度の筋強剛を見出すのに有用とされます。
3) 静止時振戦 (tremor)
安静時に手足が小刻みに震える様子です。
動作をすることで消失しやすく、緊張するとひどくなります。
・Pill rolling・・・丸薬まるめこみ運動
・Re-emergent tremor・・・姿勢をとった後、数秒から数十秒おくれて出現する
・Yes-yes type の頭部振戦・・・頭部の前後の震え。本態性振戦のno-no typeと区別される。
ほか姿勢異常もみられます。
・腰曲がり camptocormia
・首下がり antecollis
・側弯 側屈姿勢 scoliosis
こういった方が初診で来られたらまずは神経内科に相談されると思いますが、、、
非運動障害について
ついで非運動症状についてまとめます。
・精神症状・・・抑うつ、不安、無快感、注意欠陥、幻覚、錯覚など
・睡眠障害・・・レム睡眠行動障害、むずむず脚症候群、不眠、日中の眠気など
・自律神経症状・・・便秘、膀胱障害(尿意切迫、夜間多尿、頻尿)、発汗障害、起立性低血圧
・感覚障害・・・嗅覚障害、痛み、感覚異常
なんでも非運動症状は運動症状の出現以前から見られることが多く、
5割以上に出現しているんだとか。
太字はパーキンソン病の運動症状出現前の症状としてstrong evidenceのあるもの、とされます。
本日のまとめ
運動症状であれば比較的脊椎医でもパーキンソン病を疑うことができるかもしれません。
しかし運動症状の前に出現していることが多い、これらの非運動症状は、通常の脊椎診察ではなかなか見抜けません。
知らずに脊椎退行変性として加療される可能性があります。
よって、
・問診表の工夫であったり、
・パーキンソン病を意識した非運動症状を具体的に問診することで
診療の精度をあげていかなければなりませんね。
なかなか容易ではありませんが、、、
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