ピロリン酸カルシウムは腰椎椎間板にも沈着する!?
スポンサードリンク

はじめに
ピロリン酸カルシウム沈着症というのがあります。
Calcium pyrophosphate dehydrate: CPPDと訳されます。
CPPD結晶が関節内に析出して関節炎を起こすのです。
今回、脊椎脊髄病学会に参加しました。
そこでCPPDが、なんと腰椎椎間板に沈着していたという症例報告がありました。
Crowned dens syndrome
脊椎診療においてCPPD沈着症はcrowned dens syndromeというものがあり
決してまれ、というわけではありません。
頚部痛、発熱、頚部運動障害を主訴に来院する高齢者がいれば、
一つの鑑別疾患であります。
急性の発症で頚部痛、発熱、そして炎症反応が陽性にでるため
髄膜炎や頚部の椎体椎間板炎などと鑑別が必要です。
CTを撮像するとCPPDが環椎-歯突起周囲に沈着しており、
あたかも王冠をかぶったように見えるため、
crowned dens syndromeという名称です。
自分としては王冠のようにみえるかなあ?という感じです。
MRI では、この石灰化を診断するのは困難です。
治療はNSAIDs投与でよいので、
診断をつけること自体が必要かどうかはなんとも言えません。
腰椎椎間板偽痛風
それがつまり、腰痛で発症するわけです。
報告されていた症例は、
発熱と急激な腰痛、炎症反応が陽性、ということで、
やはりあたかも化膿性椎間板炎のようです。
MRIではT1で等信号、T2で高信号を呈しており
やはり化膿性椎間板炎を疑ったそうです。
そこで起炎菌同定のために、
針生検、洗浄液の培養を行ったところ細菌培養はすべて陰性だった、と。
鏡検にてCPPDを認めたとのことで、
偽痛風と診断。
経過中に抗菌薬は使用せず
NSAIDs投与のみで速やかに症状が改善したとのこと。
これは、自分なら、抗菌薬投与してしまうなあ、と思った次第です。
教訓として
稀では有るが、腰椎椎体椎間板炎の鑑別疾患に偽痛風を考慮して、
生検の際には、細菌培養のみならず、組織検査も行うべきです。
という非常にありがたい教訓でした。
本日のまとめ
ちょうどいま、既往症のまったくない40代の男性が腰痛で苦しんでおられます。
37〜38℃代の発熱があり、WBCおよびCRPにて炎症反応を認めます。
全身CTや腰椎MRIでは急性期の所見を認めません。
化膿性椎間板炎と考えて加療中です。
次回フォローのMRIで椎間板炎を疑うようなら、
経皮的病巣掻爬ドレナージ(PSD: percutaneous suction aspiration and drainage)
を行う予定ですが、鏡検も行おうと思います。
@yotsuba_spineさんをフォロー

コメント
コメント一覧 (2)
よってこの症例報告のように、今後は、ドレナージした場合に培養のみならず鏡検までした方がよいのかな、と感じた次第です。易感染性宿主でない場合などありますよね。
椎間板がMRIで変化するなら沈着の主座は椎間板なんでしょうね。