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はじめに


本日は研修医の救急症例カンファレンスです。

友人宅へ続く小高い土手から滑り落ちた70台の女性です。

頭頂部の打撲、全身の擦過傷で
頚部痛、両肩痛を主訴に救急来院されています。
後頚部から両肩、肩甲間にかけての激しい痛みがあります。

初療での診断


救急部でまずは
頭部-頸椎-胸部(両肩関節)CTまで撮像し、明らかな骨傷なし(研修医)。

頭部打撲、頸椎捻挫、外傷性頚部症候群
しかし痛みが強く帰宅困難なので整形外科で入院させてほしい
ということでした。
ファイル 2016-05-13 8 25 59

コールに対応した専修医の診断


コールにて整形外科専修医が対応しています。

さすがです。
CTにてC2の横突起骨折に気が付きました。

C2横突起骨折、外傷性頚肩部症候群

です、と指導医へ。

指導医の診断


この診断で痛みの説明がつきますか?

本人は両肩甲骨間を結構いたがりますが、なぜでしょう?

体動時に強いという特徴があります。

以下、指導医の思考をまとめます。

・骨傷なし、としたがC2の骨折に気がついたのはよかった
(ただ横突起骨折ではなくて、プラス椎体縦骨折)
・痛みの範囲はC2骨折由来、それでよいのか?
・C2であれば後頚部から後頭部にかけて放散するようなもの
・患者さんは肩甲間と両肩に放散した痛みの訴えがある
・体動時に強い


・今回頭蓋に頭頂部から軸圧がかかっている


・C2だけに軸圧??
・いやC2以外の骨も軸圧の損傷を受けている可能性を考えよう


・とくに頸胸椎移行部は注意が必要な部位
・肩甲間、両肩にひびく痛み、ならなおさら注意しましょう

その目でCTを見なおしてみると、
T1の上終板の陥凹と前上壁のtear dropの骨傷を疑えますよね?

MRIを撮像すれば、もちろん答えはですのですが
MRIは診察のもとに、疑いをもってオーダーしましょう。

よって、MRIは、単純に頸椎MRIとオーダーせずに、

「C2骨折と頸胸椎移行部に椎体骨折を疑うので、
なるべく撮像範囲が広くなるようにお願いします」

とコメント記載しました。

結果、C7、T1、なんと、T5椎体にも骨傷を認めました。
ファイル 2016-05-13 8 26 22
ファイル 2016-05-13 8 26 43


カンファレンスの役割


当事者への場末の指導とは異なり
カンファレンスは参加者全員と症例を共有することができる
のが大切な役割です。

すでに答えがある場合も、これから答えを探す場合も
一症例で、参加者全員と考察できるので重要です。

なにか一つでも勉強できることを吸収してほしいです。

で、勉強になりました、と。
それは何よりでした(笑)。

本日のまとめ


患者さんの痛みはしっかり傾聴しましょう。

外傷では痛みの由来が一つの病変からとは限りません。
他部位に合併した骨傷を念頭において診療しましょう。

受傷機転、メカニズムを想像しながら診察しましょう。

★★★★★
星地先生の経験と知識が余すところなく収められております。教科書らしくない教科書で、非常にわかりやすい!そして、なにより面白いです。絶対に一読すべきテキストです。