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はじめに


本日は、まれな腰痛疾患③です。

緊張性脊髄終糸症、脊髄終糸症候群について取り上げたいと思います。

TFT;tight film terminaleなどともいわれます。

脊髄終糸とは


脊髄終糸とは、
伸び縮みの力がある軟膜が糸状になった組織
で、尾端から尾椎までつながっております。

その役割はまさにハンモックで、脊髄を支えてくれています。

病態


この脊髄終糸が異常に緊張する
→脊髄円錐部が尾側に牽引されてしまう
→多彩な脊髄症状を引き起こしてしまう

これが病態です。

体を前に屈めると脊髄も前側、頭側に移動します。
通常は、強い牽引力が加わらないように終糸が調整してくれます。

その終糸が肥厚して硬くなると伸びなくなってしまい、
前かがみをする都度、脊髄に牽引力が加わってしまいます。

Traction myelopathy
終糸の緊張状態によって脊髄の牽引が行われ、
頻回の脊椎前屈負荷によって腰膨大部を中心としたtraction myelopathyが発生する

酸化代謝異常
慢性牽引下の状態で、急性な牽引が加わると、
尾側脊髄に酸化代謝異常が発生する

などと考えられています。

臨床症状


臨床的には
1.腰痛、下肢痛、膀胱直腸障害
膀胱直障害は頻尿のケースが多く、90%くらいとされます。

2.脊椎不橈性、FFD>20cm
前かがみになると痛いですから体が固くなっています。
体操の前かがみをさせてみて、指先と床との距離が20cm以上離れていることが一つのサインです。

3.非髄節性神経障害
下肢痛や下肢のしびれが生じても、髄節に一致しないこともあります。

4.誘発テスト陽性
立位や座位で頚部を前かがみすると痛みが誘発されて、中間位にもどすと痛みが軽減するという所見です。

画像所見


画像所見はやはりMRIです。

終糸の過緊張を疑わせる所見として、
1.終嚢部の巨大化、先端部の変形
2.脊髄円錐部の後方移動
3.頸髄-胸髄のショートカットサイン 
脊髄の走行が脊柱管内において頭尾側の最短距離を通るように、極端にシフトしている
4.脊髄の横断面が緊張によって凸レンズ状にゆがむ
5.終糸の肥厚像、だいたい1.5~2.0mm
終糸の脂肪肥厚によりT1WIのaxial画像で高信号spotに捉えることができます。
病理ではたいていlipomaとの返事になります。

やっかいなのは、low conusでない症例もある、ということです。
つまり円錐部の高位に異常がないのですね。

TFTは、脊髄係留症候群tethered cordの分類でいうとgrade1に相当するので
解剖学的な異常が画像に描出されないケースがあるということです。

治療法


治療は肥厚した終糸を切除します。
きちんと脊髄誘発電位によるモニタリング下に切離します。

切ったあとには終糸の役割がなくなってしまいます。
それでいいのかどうかはわかりませんが、
診断を満たしていれば症状の大部分が改善することがほとんどです。

本日のまとめ


まれな緊張性脊髄終糸症、脊髄終糸症候群、TFT;tight film terminal
についてまとめました。

診断にはMRIが必須です。

初回でMRIを撮像するとまではいきませんが
通常の腰痛と経過が異なるようならば
MRIを取る必要があると思います。

やはり外来でのフォローがいちばん大切なことです。