悪性腫瘍の椎体転移を疑ったときの検査のすすめかた
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はじめに
椎体骨折の原因は、外傷や骨粗鬆症性が大多数です。
しかし他にも感染や炎症性椎体疾患、腫瘍による骨破壊にともなう病的な骨折もあります。
「両下肢麻痺となった胸椎椎体骨折」という紹介がありました。
その時点でイヤな予感がしていたのです。
症例提示
詳細な病歴は割愛しますが、前医がリハ目的に受け入れた患者さんで、
前々医のところで完全麻痺になってから1~2週以上は経過してからの
前医転院だったと思われます。
当院でのMRI、、、
以下の通りです。
明らかに通常の骨折と異なる
明らかに通常の骨折とは病巣が異なります。
椎体のT1, T2 lowは椎弓根を超えて椎弓まで広がっています。
さらに脊柱管内の浸潤像により、脊髄がほぼ全周性に圧迫されています。
そしてこのような骨病変を多椎体、多肋骨、骨盤に多数認めました。
下肢は残念ながら、Frankel Aの状態です。
背部もぜんぜん痛くない、と。。。
当然ですが、悪性腫瘍の転移あるいは悪性造血器腫瘍を疑います。
どのように当該診療科へ引き継ぐか
よって、当科としては、いち早く診断をつけて、当該診療科に相談することが手助けかな、、、と。
以前記事にさせて頂いた論文の通り、
侵襲の少ない検査から行いました。
・胸部X線、一般血液生化学検査
・腫瘍マーカーは、PSA, CEA, CA19-9, AFP,s-IL2R,β2MG、
・頚部胸腹部骨盤CT
を入院時に行ないました。
CTで胃壁および膀胱壁の肥厚があり、
甲状腺と腹腔内臓器のエコー検査にて
甲状腺は問題なし。
CTで指摘された膀胱壁にエコー上でも腫脹疑いあり、
下半身の感覚がないことから
泌尿器科が膀胱鏡で膀胱内を観察してくれましたが、こちらも陰性でした。
ついでGIFを行うことと致しましたが
CTで指摘された胃壁に関しても悪性所見はありませんでした。
その時期に返ってきたs-IL2R,β2MGの値が軽度上昇していました。
ほか、貧血、低アルブミンを認め、Ca値は補正値で高値であったため、
血清免疫電気泳動(M蛋白)・尿検査(BJ蛋白)
を追加しました。
電気泳動でM蛋白bandを認めて
以上の結果から、多発性骨髄腫疑いとして内科へ転科されました。
本日のまとめ
下肢麻痺に関してはGolden timeを過ぎてしまっていては、どうすることもできません。
詳細な病歴は割愛しますが、なんともすっきりしない結末です。
さて、病歴に関していろいろ前々医に言いたいこともありますが、
今回、この論文の著者のおかげで比較的スムーズに当該診療科に引き継ぐことができたと思います。
著者が強調していることですが
・一般整形外科医なので骨転移は診れない、という事態は避けなければならない
・体系化した診断手順を用いることで、診断に至るまでの時間の消費を防ぐことができる
・常日頃から他科の骨転移患者に対して積極的対応を心がけ、他科との連携を深めることが必要
まったくその通りだと思います。
すこし古いデータですが、こちらも参考になれば幸いです。
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