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はじめに


化膿性椎体椎間板炎は非常に困る疾患です。

通常は脊椎は感染しにくい場所です。

なぜ感染してしまうのでしょうか?

キーワードは
・高齢化社会
・易感染性宿主
・内科的合併症を有する患者
です。

そして、このような患者さんだからこそ、
感染しやすい上に、難治性となってしまうのです。

治療の考え方


感染治療なので
・適切な抗菌薬投与
・安静
が加療の主軸であることは論をまちません。

しかしこの「適切な抗菌薬」をどう選択したらよいのでしょうか。

組織培養のタイミング


血液培養と局所に直接穿刺して培養
が基本なのですが、
すぐ手術で組織をとる、ということは以前は一般的ではなかったように思えます。

手術加療のタイミング


従来は
・抗菌薬に抵抗して、骨破壊が進行したり、
・不安定性が進行する場合、
・硬膜外膿瘍を形成した場合、
・神経脱落症状が出現した場合
などが手術に移行するタイミングでした。

そして治療は基本的には前方のデブリードマン、reconstructionが必要で、
後方にinstrumentationを加えるか、加えないか
あるいは一期的に行うか二期的に行うか
困難ならば頑張って後方アプローチでなんとか前方まで
のような話でした。

感染患者に侵襲の大きな手術を選ばざるを得なくて、
非常に大変なものでした。

低侵襲法が導入されたことの変化


現在は低侵襲法が導入され、
治療のタイミングが異なってきたと感じています。

やはり菌を同定しないことには、抗菌薬を選択できないので、
治療の判定を速やかに行なうことが必要です。

初期には


まず初期には
経皮的に椎間板掻爬ドレナージ
あるいは
経皮的内視鏡椎間板掻爬ドレナージ
が可能です。

・菌の同定
・菌量の減少
・局所掻爬
・局所血流改善による抗菌薬移行改善

このようなメリットがあります。
実際、この手技だけで追加手術なく完治が得られる例も多数あります。

よってわたしとしては抗菌薬の反応を速やかに判断して
必要ならばこの治療を早期に選択すべきなのではないかと思っています。

制動が必要ならば


初期あるいは中期に
不安定性が悪化、局所の制動が必要ならば
後方からMISt、つまり経皮的椎弓根スクリューで制動固定が可能です。

感染椎体にinstrumentを行うか、またいで行うか、の判断が必要です。
最近ではT2高信号になっていても範囲が高度でなければinstrumentを行う施設もあります。

前方の掻爬、再建が必要ならば


前方のデブリードマン、reconstructionが必要ならば
最近は前方アプローチも低侵襲アプローチがさかんです。

XLIFは電気刺激用の器具が使用できなくなりましたが、
開創器を使用することは可能なので
ミニオープンの要領で、前方のデブリと自家骨での固定は可能です。

本日のまとめ


化膿性椎体椎間板炎にも低侵襲アプローチによる加療が導入されております。
おかげで、それぞれの経過、病態に応じて積極的な治療が可能になってきました。

わたしは、保存加療にこだわるよりは、
内科的加療が効果あるか効果ないか
速やかに判断を行って、積極的な低侵襲法による手術治療を選択することが
早期改善のカギと考えています。

★★★
MIStに関わろうとしている脊椎外科医へ。手技に関する待望のバイブルが完成です。