カテゴリ:
スポンサードリンク

はじめに


脊椎脊髄病学会のモニタリング委員会が行った調査では
7000例の脊椎脊髄手術のうち、1.8%に術後麻痺が生じたと報告されております。

時代とともに、術中脊髄モニタリングの重要性が増していると思います。

当施設では退行性変性疾患においての除圧術、除圧固定術
外傷でもBKPを除いて頸髄や胸髄を含む多椎間固定であれば
基本的に全例脊髄モニタリング下に行っています。

モニタリングは電位が出ないときの解釈が非常に難しいです。

ときに経頭蓋刺激電極の刺入点はどのようにされていますか?

当施設の脊髄モニタリングの様子


当科では脊髄モニタリングは麻酔科の先生と、臨床工学士とで協力しながら行っております。

筋弛緩剤は導入時のみ、
麻酔維持はフェンタニル、とプロポフォールのTIVAで行って頂いております。

MEPは日本光電で、8チャンネルです。
SEPと組み合わせてtwo modalityで行っています。
Free-run EMGについてはまだまだ解釈がわからず、設置していません。

当面はMEPとSEPの組み合わせで行って研鑽を積んでおります。
未経験ですが、症例に応じて脊髄誘発電位をさらに組み合わせる、といったところでしょうか。

当科でのMEPの方法


最初は、わたしがCz(vertex)から2cm前方、5cm外側に針刺激電極を刺入していました。
001

いつからか、臨床工学士さん主導となり、
刺激の位置は、Czから7cm外側になりました。

なんでも、メーカーの推奨だそうで、、、

せっかく臨床工学士さんが率先して行ってくれるので
口を挟まないように行っていましたが、
う〜ん、やっぱり下肢筋の電位が十分に出ないことが多いのですね。

下肢はだいたい
・QF(Quadriceps Femoris)
・TA(Tibialis Anterior)
・AH(Abductor Hallucus)
を左右それぞれ6筋、

上肢ADM(Abductor Digiti Minimi)をコントロールとして行っています。

それが6筋すべてで描出が不良だったり
左右、別々で不良だったり、、、

刺激電極の位置はどこが至適なのか?


やはり刺激電極の位置がまずいのかな、、、

松田らの方法では外側7cmに、前方2cmです。
松田英雄,ほか:神経進歩32:124-137,1988.

ペンフィールドのホムンクルス図を見ますと、やっぱり下肢から遠ざかってしまいます。
002

頭蓋の大きさも個々で異なりますし、
頭蓋が小さい人にとっては7cmは遠すぎるかな?と。

臨床工学士の先生と話あってみて、
当面はCzより5cm外側、2cm前方で刺激してデータを検討することになりました。

刺激電極にはスクリュー電極と皿電極があります。
精度の問題を優先して、スクリュー電極で行う点で一致しました。

モニタリング波形変化時の確認事項


そしてお互いで、モニタリング波形変化時の確認事項をまとめました。
・筋弛緩薬
・吸入麻酔薬
・麻酔深度(BIS)
・低体温
・低血圧
・導出部インピーダンス
・配線
・刺激装置・電極
・そして再現性があるかどうか

本日のまとめ


術中脊髄モニタリングは、手間暇かけて育てていくものと解釈しています。
その手間のために、施設によってはモニタリングを軽視しているところもあり
今後の発展が見込まれます。

種類や技術について習熟する機会が得られないという言葉も聴きますが
脊椎脊髄病学会は、モニタリングのハンズオンも行っておりますし、
個々でも研修に行けるよい時代です。

電位が取れないときの解釈が困難ですが、
さらなる精度、安全を目指していこうと思います。

初学の臨床工学士の先生や研修医におすすめです。