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はじめに


外来をしていると骨粗鬆症性椎体骨折の多さ
これは、ほんとうになんとかしないとまずいな、と思います。

けっこう転倒後で橈骨・大腿骨骨折の既往があるにも関わらず
骨粗鬆症加療がなおざりになっている事もあるんですよね。。。

なぜこの時から治療をはじめなかったんだろう?
脊椎外科医が積極的に介入していかなければ・・・

と切実に感じます。

大腿骨骨折の対策は強化されたが


骨粗鬆症性大腿骨近位部骨折は、骨折直後から患者のADLを著しく障害します。
結果、致死率の上昇を招くと報告されたため、対策強化が行われました。

しかし、一方で、骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折は、症状が軽微なことも多く
保存治療で基本的には骨癒合が得られることがほとんどです。

骨粗鬆患者で最も頻度の高い骨折でありながら、
充分な研究や対策がとられてこなかったのが現状ではないでしょうか?

しかし、この超高齢化社会を迎えて、
受傷直後にはQOLに及ぼす影響はごく軽度であっても、
時間が経過すると、患者のQOLに影響を及ぼすことが明らかになってきています。

・癒合後の後彎変形→頑固な腰痛の遺残
・遷延癒合→癒合不全→偽関節→遅発性神経障害

このような問題点がわかってきたため、
・早期の診断
・適切な治療介入
・続発性骨折の予防
という段階的、長期的な加療の戦略が必要です。

どのような骨折の予後が悪いのか


ドラえもんの未来テレビではありませんが、
将来のことが前もって予見できればどんなに治療に役立つことでしょうか。

わたしの知しうる偉大な先生方の臨床研究では

MRIでの椎体骨折の予後予測.
中村博亮先生ら:脊椎脊髄22(3):240-246,2009
この研究は前向きコホートです。
・6ヵ月後の単純X線で椎体内にcleft像があるものは、12.7%
・MRIにてT2輝度変化で広範な低輝度変化型限局した高輝度変化型
胸椎腰椎移行部骨折
が癒合悪い

骨粗鬆症性脊椎椎体骨折における画像診断—早期MRI分類による予後予測の試み
寒竹司先生ら:日本整形外科学会雑誌 83(3) 579, 2009

低輝度広範型かつT2輝度変化が広範な低輝度変化型または限局した高輝度変化型
が癒合悪い


骨粗鬆症性椎体骨折の保存療法 立位-仰臥位X線側面像による骨粗鬆症性椎体骨折偽関節危険因子の検討.杉田誠先生ら:日本整形外科学会雑誌 85(12);942-946,2011
・初診時の立位・仰臥位での後弯角の差が大きい、具体的には10度以上
が癒合悪い

あとは
・後壁が損傷されているタイプ(当たり前か)

でしょうか。

予後不良例をどのように治療するか


浜松医大の坂野友啓先生,戸川大輔先生らは
「これらの予後不良所見がみられるならば、
初期治療からより厳重な管理と注意深い経過観察、
場合によっては早期の観血的治療介入が必要となる」
と述べられております。
坂野友啓,戸川大輔:骨粗鬆症性椎体骨折ならびに偽関節.脊椎・脊髄 29(4):414-419,2016


現在の骨粗鬆症加療は、単純に骨が癒合すればいいというものではなく、
後弯変形をきたさないよう、続発性骨折をきたさないよう
という数段高いレベルでの加療を求められています。

椎体形成、BKP、MISt、前方固定、後方固定
いろいろな手段が増えました。
骨粗鬆症加療にもいろいろな選択肢が増えました。

骨粗鬆症加療は以前よりもはるかに戦い甲斐のあるものに変わってきました。

本日のまとめ


骨粗鬆学会も来年度から認定医制になるようです。
脊椎外科医こそ積極的に骨粗鬆症加療に挑んでいかなければならないと思います。

★★★
MIStに関わろうとしている脊椎外科医へ。手技に関する待望のバイブルが完成です。