カテゴリ:
スポンサードリンク
001

はじめに


転移性脊椎腫瘍は骨折や麻痺の出現により
救急車で搬送されることがあります。

よって、緊急での手術対応をせざるを得ません。

これらの重篤な骨関連事象・・・
なんとか起こらないうちに、あるいは切迫している状態で
早期発見しなければ、このような事態はいっこうに減らないと思います。

早期発見、早期治療に関しては脊椎外科のみならず、
原発腫瘍化科でも積極的に行われていないのが現状であります。

無症状のものを発見するのは困難ですが
早期に発見することができれば、
後述するように、その患者さんの状態に応じて
多くの治療の選択肢を検討することができます。

リエゾン医療・Cancer boardの役割


これらは、定期的に開催されるカンファレンスのことで、
原発がん診療科、脊椎外科、放射線治療科、腫瘍内科、緩和ケアチーム、リハビリ科
看護師、医療ソーシャルワーカーなど、
がん患者に関わる多くの職種が参加し、患者の診断や治療方針決定につき協議するのです。

地域がん診療拠点病院においてはこのような医療チーム体制が責務となります。

脊椎外科医はどのようなときに関わるかといえば
それはやはり脊椎転移の時です。

SINSで骨不安定性を評価


SINSとは
The Spine Instability Neoplastic Scoreのことで、
Spine Oncology Study Group; SOSGにより作成されたスコアです。

ちなみにSOSGは脊椎腫瘍において国際的にご高名な方々のグループです。
各国のリーダーで構成されています。

6つの検討項目での合計の点数が
・0−6点では安定
・7−12点では不安定性の可能性あり、切迫骨折の可能性がある
・13−18点では不安定
というものです。

つまり7点以上では脊椎外科にコンサルトする適応があります。

川崎医科大学中西一夫先生が率いるリエゾン医療チームでは
SINSスコアが7点以上の症例においてカンファレンスで
整形外科的な治療方針を検討されているといいます。

転移性脊椎腫瘍は適切な時期に適切な治療が可能な時代になってきた


椎体の圧潰、麻痺が起こってからの手術では改善が悪く、
重篤な後遺症が残りがちです。
だからといって、緊急で対応しなければならないのですが、
現在重要なことは、いかに早期に発見し、早期の対応をとるか、ということです。

治療の選択肢は
・抗癌剤の発展
・分子標的薬の出現
・ビスフォスフォネートやRANCL抗体に代表される骨修飾薬の発展
・放射線治療の発展
・TES; total en-block spondylectomyからMIStによる低侵襲制動固定、BKPなど
これらの治療を組み合わせることで
予後の改善や麻痺をきたさないような治療まで、
条件付きではありますが、選択が可能になりつつあります。

本日のまとめ


比較的新しいスコアでSINSを紹介しました。
脊椎外科医が積極的に担癌患者にアプローチすることで
早期の対応が可能になると思います。

わたしの施設では高度ながん治療はできませんが
放射線科と綿密に連絡をとって、椎体腫瘍がある場合は
コンサルトを待たずに積極的に介入しようと思います。

重篤な骨関連事象が起こってからの緊急手術をなんとか減らしたいのです。