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はじめに


中下位の頸椎損傷の治療方針をたてる際、多くのことを考慮する必要があります。
ひとくちに頸椎損傷といっても、
・どのような損傷なのか?
・重症度はどうなのか?
・不安定性は?
・神経症状は?
・どのような方針で治療すべきなのか?
といった問題を評価する必要があります。
そして、それらはだれもが共通の言語として標準化されることが重要です。

これ、単純ではないのですよね。

そこで現在その有用性の報告が次々とだされている
SLIC sytemについてまとめます。

Allen-Ferguson classification


中下位の頸椎損傷について分類する際に、
従来Allen分類というものが使用されてきました。

英文ではAllen-Ferguson classification (AF classification)と記載されることが多いです。
邦文ではなぜかFerguson先生の名を省略されてアレン分類と記載されることが多いように感じます。

出典は
Allen BL Jr, Ferguson RL, Lehmann TR, et al: A mechanistic classification of closed, indirect fractures and dislocations of the lower cervical spine. Spine. 7: 1-27, 1982.
です。

1982年の分類なのに、いまだ使用される理由は
損傷発生のメカニズムを損傷時の頸椎の肢位と外力のベクトル方向で6型に分類して、
さらにそこからいくつかのステージに細分化

しているため、つまり包括的なのです。

「アレンDF stage2」などといえば
distraction flexion forceによる受傷で、片側が脱臼しているんだ
と受傷メカニズムと損傷の程度を伝えることができるのです。

ただし、実際に分類をみたら一目瞭然なのですが、
細かいし、受傷機転が判断できないこともあるため、
検者内、検者間における再現性、信頼性の評価が不十分
という欠点があります。

また、受傷メカニズムをもとにした分類であるため、
脊柱の安定性に影響する椎間板や靭帯の軟部組織の評価や、
神経障害については考慮されていない

という欠点もあります。

SLIC system


そこでSLIC systemによる分類が発表されております。
SLICとは The subaxial cervical spine injury classification and severity scale.
の略です。

以前、胸腰椎損傷のまとめでTLAOSISというものを紹介しました。
胸腰椎損傷 新AO分類についてのまとめ

おなじVaccaro先生のグループが、中下位頸椎損傷も応用して同様にスコアでまとめたものです。

Vaccaro SLIC The subaxial cervical spine injury classification and severity scale.
The subaxial cervical spine injury classification system: a novel approach to recognize the importance of morphology, neurology, and integrity of the disco-ligamentous complex. Spine 32: 2365-2374, 2007.


損傷形態に加えて、
AF分類で評価されなかったDLC(discoligamentous complex)神経障害を組み合わせて
脊柱の安定性と治療管理について定量化した、画期的で、初めての分類となります。
10点満点で評価して、1-3点は保存、5点以上は手術という評価となります。

このSLIC systemをして、中下位頸椎損傷のAO分類へと発展していくわけです。
このAO分類については後日まとめを記載します。

本日のまとめ


中下位頸椎損傷については
須田先生らは、
・脱臼骨折グループ・椎体破裂骨折グループにわけて
・脱臼整復操作の難易度や除圧の必要性
・アンカーの数やinstrumentの数、種類
・ハローベストなどの外固定の種類
などを考慮して治療方針を決定する旨報告されています。
須田浩太ら;関節外科.27(7): 930-937, 2008.


本当にわかりやすくて、わたしも実践しております。
さらにSLIC systemを用いればDLCや神経障害の程度も評価され
共通言語として用いやすいと思います。

AO分類とともに、今後の動向に注目です。

★★★
MIStに関わろうとしている脊椎外科医へ。手技に関する待望のバイブルが完成です。