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はじめに


2003年に
Pamidronate (Aredia) and zoledronate (Zometa) induced avascular necrosis of the jaw:
a growing ediemic.

という論文でビスフォスフォネート製剤による治療をうけている骨粗鬆症患者やがん患者に
難治性の顎骨壊死が発生することが報告されました。

Bisphosphonate Related Osteonecrosis of the Jaw:
BRONJ

という名称で認知されております。

非常にまれであるとはいえ、難治性であるがゆえに
発生したら実臨床で非常に困ってしまいます。

わたしは幸い経験はありませんが、
今後症例が蓄積されていくに連れて避けては通れない事態が待っているかもしれません。

とある地域の会で、
「顎骨壊死が心配だからビスの内服を静注に変えた」とおっしゃられた方がおりました。
中には最新のデノスマブ治療は顎骨壊死の頻度が低いと思っている方もおられるようです。

そもそも顎骨壊死とは


顎骨壊死の診断は
① ビスフォスフォネートまたはデノスマブによる治療歴がある
② 顎骨への放射線照射歴がない。また骨病変が顎骨へのがん転移ではないことが確認できる
③ 医療従事者が指摘してから8週間以上持続して、口腔・顎・顔面領域に骨露出を認める。または口腔内、あるいは口腔外の瘻孔から触知できる骨を8週以上認める。
The Journal of Japan Osteoporosis Society. 2(4):389-392, 2016

というものです。

デノスマブでも同程度顎骨壊死が発生することが判明
Denosumab-Related Osteonecrosis of the jaw: DRONJ
と合わせて、
Anti-Resorptive agent-Related Osteonecrosis of the jaw: ARONJ
骨吸収抑制薬関連顎骨壊死という名称が使用されるようになっています。

よってデノスマブだと大丈夫、というのは誤解です。

メーカーの第一三共さんもそのあたりはいつもしっかり説明してくれます。

発生頻度について


骨粗鬆症患者10万人あたりの発生率について
・ビスフォスフォネート製剤
  ・経口投与で約1-60人
  ・静注投与で約0-90人
・デノスマブは0-30人
程度とされています。

決してビス静注投与のほうが顎骨壊死の発生率が低いというわけではありませんし、
デノスマブだからといって顎骨壊死の発生が抑えられるというわけではありません。

顎骨壊死に対する現在の考え方は?


発生頻度や機序、予防法あるいは対処法などがはっきりわからないために、
とりあえず歯科治療前後の3ヵ月くらいを休薬期間にあてているのが現状と思われます。

ただ、
・休薬による骨粗鬆症の悪化、骨密度低下、骨折の発生のリスクと
・顎骨壊死発生のリスク
を天秤にかけると、実は、骨折予防についての治療を継続したほうが利益が高いとされます。

ビスなどは、歯科医師からは目の敵のように扱われ、
継続が困難に陥ってしまう可能性があります。

ただし4年以上ビスフォスフォネート制剤による治療が継続されている場合は
顎骨壊死の発生率が高まるとのデータが示されています。

個人的には長期骨吸収抑制剤を処方することの是非は判断しかねますが、
4年を超える長期処方を受けている患者さんが、
侵襲的な歯科処置が必要な場合は
歯科医師と連携をとりあって、
骨折リスクとの兼ね合いを話し合って
可能ならば2ヵ月前後程度の休薬期間を設ける
ことを提案しております。

いかに歯科医師と連携していくことかが大切なことでしょう。

また、顎骨壊死の引き金は感染とされており、
歯科治療前後に口腔内の感染予防にしっかり努めるということも重要な点です。

本日のまとめ


骨粗鬆症加療は現在ならびに将来の高齢化社会に対して非常に重要な位置づけにあります。
成果ある骨粗鬆症の加療は、高騰する高齢化医療費の抑制にも必ずつながると思います。
選択薬がどんどん増えていくにあたり、知識のアップデートが重要ですね。