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はじめに


脊椎のinstrumentation surgeryでの術後合併症は何が一番つらいか?といえば
術後感染
であることに異を唱える方はおられないでしょう。

人工物の表面にバイオフィルムを形成してしまうため、感染の治療は非常に難渋します。

感染症予防に対しては常にアンテナをたてて置かなければなりません。

メディカルトリビューンに興味深い記事がありましたので記事で紹介します。

整形外科術後の感染予防の3つの要点


2017.1.17の記事です。
タイトルは
整形外科手術後の感染予防に3つの要点
内容は第29回日本外科感染症学会(2016年11月30日~12月1日)の学会レポートです。

ガイドラインの作成委員を務めておられる
関東労災病院の整形外科・脊椎外科の山田浩司先生のものです。

・脊椎インストゥルメンテーション手術
・投与時間
・セフェム系経口抗菌薬
に関連する3つの要点を解説した。
 
第1の要点
第1の要点として挙げた脊椎インスト手術は、専用の金具を用いて脊椎を固定する術式であり、非常に感染リスクが高い。そのため、GLでこの手術に対するグリコペプチド系抗菌薬の予防投与について指針を示すことは大きな意味を持つとされた。

具体的には、この手術に対する同薬の予防投与が適する条件が記載されており、同一施設でMRSAやメチシリン耐性のコアグラーゼ陰性ブドウ球菌によるSSIの多発発症が認められた場合とした。この手術の前には、MRSAを保菌している可能性が高い患者を対象にそのスクリーニングを考慮し、保菌者も対象とするという記載も見られる。

第2の要点
また、第2の要点は、予防抗菌薬の投与期間は一部の例外を除き術後48時間以内としていることで、耐性菌による術後感染リスクを避けることを念頭に置いているとされた。

第3の要点
さらに、第3の要点として、整形外科領域の手術においては経口抗菌薬がほぼ無効であることから、推奨投与期間を超えた経口抗菌薬の追加投与は不要であると明記された点にも留意すべきであるとした。

その他の推奨内容については、骨折手術、人工関節置換術、脊椎手術(インストありおよびなし)、関節鏡視下手術(靭帯再建ありおよびなし)、軟部組織(筋、腱、神経)の手術、四肢切断、悪性腫瘍切除後の再建手術、開放骨折(Gustilo Type※Ⅰ、ⅡおよびⅢ、Ⅳ。ともに受傷後6時間以内でかつ軟部組織が適切に処置された場合)といった術式ごとに予防抗菌薬投与の指針を提示している。指針内容は、基本的にセファゾリンを推奨し、β-ラクタム系抗菌薬に対してアレルギーのある患者については、代替案としてバンコマイシン(VCM)、テイコプラニン、クリンダマイシンが挙げられている(表)。
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(日本化学療法学会・日本外科感染症学会編「術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン」」)

同氏は今後の課題について、「初回人工関節置換術での抗菌薬含有骨セメントや脊椎インスト手術に対するVCMパウダーの局所投与によるSSI予防効果は、安全性も含めてさらなる検討が必要」と指摘した。


術後感染予防は非常に興味深いところです。

バンコマイシンパウダーの投与に関しては、
脊椎固定術後感染症例においてインプラントを温存できて有効とされる報告が散見されます。
脊椎固定術後の感染にバンコマイシンパウダーは有効なのか

質の高い臨床研究で比較しにくいところなので、なんともいえませんが
インプラント抜去はなんとしてでも避けたいのが主治医の気持ちだと思います。

予防投与に関しては、本当にそれが感染予防効果があるのかどうか判断しかねます。

しかし感染を予防できるなら、なんだってやっておきたい気持ちに駆られます。

ちなみにわたしはまだバンコマイシンの予防投与の経験はありませんが、、、

本日のまとめ


・脊椎instrumentation surgeryは感染のハイリスク
・同一施設でMRSAやメチシリン耐性のコアグラーゼ陰性ブドウ球菌によるSSIの多発発症が認められた場合はグリコペプチド系抗菌薬の予防投与を考慮
・術前に、MRSAを保菌している可能性が高い患者を対象にスクリーニングを行い、保菌者も対象とする
・通常はCEZが推奨
・48時間を超えての処方はしない
・推奨投与期間を超えた経口抗菌薬の追加投与は不要
ということですね。