カテゴリ:
スポンサードリンク
001

はじめに


わたしは学会出張の際などに、
もし都合が合うならば、なんとか手術を見学したい
と常々思っております。

もちろん学会に参加することも代えがたい経験を生み出します。

ただ、手術の見学で得られる現場での気付きや学びは、
もう、すぐ明日につながる超実践的なものばかりです。

また、その場で形成された他施設の先生とのつながりは
今後の人生に大きな影響を及ぼしていくことは、
これまで何度も体験しています。

今回は、OLIFを見学できる幸運を得ました。

OLIFとは?


OLIFとは
Oblique lateral interbody fusionのことで、
XLIF; eXtreme lateral interbody fusion
とあわせて、低侵襲前方アプローチによる椎体間固定術のアプローチ法の一つです。

LLIF;
lateral interbody fusionの範疇の手技で、いずれも認定制です。

XLIFが大腰筋をsplitして椎体に垂直にアプローチすることに対し、
OLIFは大腰筋前縁から後方へretractして、椎体に対してやや斜めからアプローチします。

OLIFに対する個人的偏見


わたしはいろいろな幸運に恵まれ、XLIF認定医となり、
低侵襲前方アプローチとしてはXLIFを行っておりました。

そのため、OLIFはこれまで手技書でしか見たことはありませんでした。

これまでの自分の座学の印象ではOLIFはXLIFと比較して

①尿管損傷
②分節動脈損傷
③ケージによる対側椎間孔神経根刺激症状

のリスクが高いと思っておりました。

それに対してXLIFは腸管損傷の合併症が非常にクローズアップされました。

見学に行った施設の術者は超一流の技術をお持ちでした。
まさに流れるような手術で、
手術の途中途中で、先述の①〜③の疑問に対して懇切丁寧にご指導くださいました。
おかげでOLIFの偏見が解消されました。

本当に感謝です。

尿管損傷について


まず尿管損傷については
・基本的に、尿管は確認することができる。
今回も確認することができました。
つやつやした色調で白っぽい、ductの構造(当たり前ですが)をしておりました。
・少し触れると蠕動する。
・ただ、確認できなくても無理に確認に向かう必要はない。
・大腰筋の前方に組織が何もないことをしっかり確認することが重要。
・大腰筋の表面の薄い筋膜ごと脂肪組織を前方に押し込み、指で椎体の前面まで触れるようにすればまず腸管や尿管を損傷しない。
・どうしても不安が残るならば大腰筋前縁をわずかにsplitして大腰筋を後方に押しのけてもよい

分節動脈損傷について


開創器固定用の椎体ピンが分節動脈を貫く可能性があります。
開創器のサイズが一定であるため、椎体がwedgeして一部潰れていたり、
椎間板高が狭い場合はピンが椎体中央にくることがあるので注意が必要です。

・術前にあらかじめ分節動脈の走行を確認することが必須。
・3DCTAが確実。MRI T2 coronal、sagittalでも確認が可能。
・走行を確認し、基本的には分節動脈が走行していない終板近くにピンを刺して固定する。

ケージによる対側椎間孔神経根刺激症状


・術前のセッティングが非常に大切。
・XLIF同様に、椎体の前縁、後縁、椎弓根を正面、側面の0度、90度でしっかり揃えておく
・そうしておけばあとでケージの方向がわからなくなることはない。
ここはまさにXLIFの肝と同様でした。
・もちろんケージ打ち込みの際に透視の確認を怠らないようにする。

本日のまとめ


以上OLIFの見学でわたしが学んだことです。
一流の術者は、トラブル回避のためのストラテジーに隙がないからこそ一流であるのだと思います。

ちなみにXLIFに関しても、わたしは小切開にこだわらずミニオープンで、大腰筋を確認しながら行っております。
視野は、今回見学したOLIFと全く同様であったので、自分の手技にもすこし手応えを感じることができました。

実は、また別の施設でOLIFを見学する機会があります。
本当に幸運です。ほぼ同時期にそれぞれ別の一流の術者のOLIFを見学できるのですから。

また新しい学びを得たいと思います。

ちなみに今回の見学の結果、わたしもOLIFの認定医となった模様です。