高齢者の歯突起骨折の治療について
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はじめに
高齢者は予期せぬ転倒を起こします。
ふらついたり意識消失したあとの転倒が多く、
若年者と違って、とっさの受け身がとれません。
その為、前額部や後頭部を強打してしまい
頚椎損傷を引き起こすことが少なくありません。
歯突起骨折について
そんなひとつの代表骨折に歯突起骨折があります。
頸椎損傷の10〜15%の頻度とされます。
Anderson分類が用いられることが一般的です。
Type Ⅱはnon unionに至る可能性が高く、手術適応とされます。
もし癒合に至らずそのまま不安定性を放置していると
頚髄症を引き起こす可能性があります。
緩徐に進行する場合もあれば急激な発症をきたす場合もあります。
場合によっては延髄部にあたるため、生命に危機に発展することもあります。
ただ、それならばⅡ型は全例手術適応なのか、と言われれば
そこはなかなかコンセンサスが得られていません。
症例提示
症例は
「80代後半、女性
夜間排泄時にふらついて転倒し前額部を強打
その後の頚部痛
明らかな四肢症状なし」
です。
Type Ⅱの歯突起骨折です。
現在外固定とPTHで2ヵ月経過しております。
受傷直後は手術を推薦しました。
①まず負担の少ない前方螺子固定を行ない、
癒合不全になるならばやむを得ないので後方からC1-2で固定
という2段階の治療法と
②最初からC1-2後方固定
を提示いたしました。
どうしてもいやというので
③保存加療で偏位が悪化しないか慎重にフォロー
でみています。
ただしハローベストは絶対いや
ということでした。
わたしの前方螺子固定は片手で数える程度の経験しかありません。
実は、結局前方螺子固定のみでは癒合は得られませんでした。
これまではPTHは種々の理由で併用できませんでした。
この症例はPTHを最初から導入しています。
まだまだ慎重に観察していかなければなりませんが
このまま保存加療で癒合が得られるかもしれません。
考察
Clinical Evaluation of Anterior Screw Fixation for Elderly Patients With Type II Odontoid Fractures
J Spinal Disord Tech 2011;24:E75–E81
より
・1980年に中西ら、1982年にBohlerらの報告により前方螺子固定が導入され
多くの良好な治療成績が報告されている。
・Bednarらは、平均年齢81.5歳の156人の患者を対象に、歯突起骨折を後方視的に研究した。
その結果、コホート全体の死亡率は年齢の延長とともに増加していた。
手術療法群は非手術療法群よりmortalityが低いことが多いことが示された。
手術に伴う生存の優位性は、85歳未満の患者に限られていたという結論に達した。
・Kuntzらは、高齢者の歯突起骨折Ⅱ型での早期のmorbidityは10%で、mortalityは20%だったと報告した。彼らの臨床研究では、歯突起骨折Ⅱ型での非手術群のnonunionは50%であったが、手術群のnon unionは9%であった。
・ちなみに後方C1-2固定では
回旋は約50%制限され、屈曲運動は約30%制限される
本日のまとめ
高齢者の歯突起骨折の治療は悩ましいです。
骨質の問題もあります。
もともとのADLの問題や、全身状態の問題もあります。
慎重にフォローしながら個々の状態を評価して治療法を選択せざるを得ないですよね。
★★★
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