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つぎつぎに連鎖する椎体骨折症例が多発性骨髄腫であったことを経験しました。




以来、高齢者では脆弱性椎体骨折と区別がつかない多発性骨髄腫が紛れ込んでいるのではないかという恐怖にかられています。

多発性骨髄腫=血液疾患
という認識が強いですが、実際は多彩な症状を呈する全身疾患のような病態です。

多発性骨髄腫で初診から血液内科を受診する患者さんはほとんどいないそうです。

主訴のほとんどは腰痛、背部痛で、むしろ整形外科を初診しています。

波のように押し寄せる腰痛診療で、単純な腰痛というだけで、われわれに多発性骨髄腫を疑って血液検査を追加することはなかなか容易ではありません。

しかし骨粗鬆症診療を行っていれば話は変わってきます。

脆弱性椎体骨折は、発症してしまえば、すなわち骨粗鬆症加療の開始を意味します。

よって骨代謝マーカーを測定するはずです。

なので、わたしは、初回の骨粗鬆症セットの採血の中に、いくつかスクリーニングできる検査を組み込んで、脆弱性椎体骨折を来した患者さんが、多発性骨髄腫や副甲状腺機能亢進症の治療機会を損失しないように、調べるようにしています。

初回のセットではいわゆる通常の血算、生化学的検査に加えて、以下を調べます。

・TP, Alb (Alb/Globulin ratio)
・Ca, IP, LDH
・HbA1c
・蛋白分画(血清蛋白電気泳動)
・Tracp-5b, total P1NP
・intact PTH
・25(OH)VD,ucOC
・尿蛋白
・随時尿中Ca,Cr

項目が多すぎますね(汗)、、、

査定の不安もありますが、脊椎専門機関を受診したのに、治療機会を損失した(見逃し?)と思われる恐怖のほうがもっと強いんですよね、、、

ただ実際、何をどこまで調べるのが標準的なのか、皆目わかりません。
そのような教科書はありませんので、自分で作っていくしかないと思います。

このように検査をすすめていくと、実は、昨年、80歳から89歳の脆弱性骨折のうち、約9%でM蛋白を検出したんですよね、、、

やっぱりこの数値は非常に高いと思うのです。

多発性骨髄腫は整形外科ではけっして稀ではないとおもいます。




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星地先生の経験と知識が余すところなく収められております。教科書らしくない教科書で、非常にわかりやすい!そして、なにより面白いです。絶対に一読すべきテキストです。