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はじめに


前方アプローチの論点のひとつに、
「左右どちら側からアプローチするか?」
があると思います。

基本的には左アプローチが推奨される、と学習してきているはずです。

その理由は、反回神経麻痺の発生にあります。

反回神経麻痺について考察してみます。

反回神経の走行


反回神経は迷走神経から分枝された後、左右異なる走行を示します。
Cunningham's_Text-book_of_anatomy_(1914)_(20194192634)

画像はウィキメディアrecurrent laryngeal nerveより。

左反回神経
左反回神経は大動脈弓下を後方に反回する走行です。
気管食道溝に接して上行し、気管と食道の間に位置します

右反回神経
右反回神経は鎖骨下動脈レベルで反回する走行です。
鎖骨下動脈と総頚動脈の背側を上行し、下甲状腺動脈の前方ないし分枝間を通過して頭側に上行します。
気管から離れた外側、後方を走行するところが左と異なります。


よって、右側アプローチの方で手術時に損傷する可能性を考慮する必要があるわけです。

反回神経の亜型も存在する


また、右側反回神経には、約1%に迷走神経から反回せず、直接咽頭へ分枝する亜型が存在するそうです。
non-recurrent laryngeal nerveという亜型だそうで。
この亜型の存在は知らなかったです(汗)。



左アプローチが推奨されるが、こんな論文も


以上の理由により、左アプローチが推奨されます。

そんななか、このような論文もあります。

J Neurosurg Spine. 2006 Apr;4(4):273-7.
Effect of approach side during anterior cervical discectomy and fusion on the incidence of recurrent laryngeal nerve injury.
Kilburg C, Sullivan HG, Mathiason MA.

ACDF418例の後方視的検討です。
・278人(66.5%)が右側アプローチ、8人(1.8%)
・140人(33.5%)は左側アプローチ、3人(2.1%
に反回神経傷害が生じて、左右差はなかった
とされるものです。

椎間高位での検討はありません。
そもそも右側アプローチが多いですね。

左右どちら側からアプローチしますか?


わたしが修練を受けた施設では、とくに左右の絶対的なこだわりなく手術を行っていました。
椎体間ミニスプレッダーを用いていたので、基本的には頸髄の圧排要素の強い側からアプローチするように指導されました。

今のわたしは、
・基本的には、反回神経損傷を考慮し左側からアプローチ
・あまりにも気管の偏位が許容できない場合は、気管が偏位していない側
のような気がしますね。

本日のまとめ


今月号の脊椎脊髄ジャーナルの特集は前方アプローチです。
再考する絶好の機会でした。

最適な答えは持ち合わせませんが、知識は常にアップデートしていきたいですね。