頸椎前方アプローチ、左右どちら側からアプローチしますか?
スポンサードリンク
はじめに
前方アプローチの論点のひとつに、
「左右どちら側からアプローチするか?」
があると思います。
基本的には左アプローチが推奨される、と学習してきているはずです。
その理由は、反回神経麻痺の発生にあります。
反回神経麻痺について考察してみます。
反回神経の走行
反回神経は迷走神経から分枝された後、左右異なる走行を示します。

画像はウィキメディアrecurrent laryngeal nerveより。
左反回神経
左反回神経は大動脈弓下を後方に反回する走行です。
気管食道溝に接して上行し、気管と食道の間に位置します。
右反回神経
右反回神経は鎖骨下動脈レベルで反回する走行です。
鎖骨下動脈と総頚動脈の背側を上行し、下甲状腺動脈の前方ないし分枝間を通過して頭側に上行します。
気管から離れた外側、後方を走行するところが左と異なります。
よって、右側アプローチの方で手術時に損傷する可能性を考慮する必要があるわけです。
反回神経の亜型も存在する
また、右側反回神経には、約1%に迷走神経から反回せず、直接咽頭へ分枝する亜型が存在するそうです。
non-recurrent laryngeal nerveという亜型だそうで。
この亜型の存在は知らなかったです(汗)。
頚椎前方アプローチには、
— 四つ葉スパインクリニック (@yotsuba_spine) 2018年8月9日
・血管(頸動静脈、甲状腺動脈)
・神経(反回神経、上喉頭神経)
・食道
・気管
・交感神経幹
などの解剖に習熟する必要があります。
脊椎脊髄ジャーナル今月号は、まさに集大成で必読の書です。https://t.co/smeWW52lJj
左アプローチが推奨されるが、こんな論文も
以上の理由により、左アプローチが推奨されます。
そんななか、このような論文もあります。
J Neurosurg Spine. 2006 Apr;4(4):273-7.
Effect of approach side during anterior cervical discectomy and fusion on the incidence of recurrent laryngeal nerve injury.
Kilburg C, Sullivan HG, Mathiason MA.
ACDF418例の後方視的検討です。
・278人(66.5%)が右側アプローチ、8人(1.8%)
・140人(33.5%)は左側アプローチ、3人(2.1%
に反回神経傷害が生じて、左右差はなかった
とされるものです。
椎間高位での検討はありません。
そもそも右側アプローチが多いですね。
左右どちら側からアプローチしますか?
わたしが修練を受けた施設では、とくに左右の絶対的なこだわりなく手術を行っていました。
椎体間ミニスプレッダーを用いていたので、基本的には頸髄の圧排要素の強い側からアプローチするように指導されました。
今のわたしは、
・基本的には、反回神経損傷を考慮し左側からアプローチ
・あまりにも気管の偏位が許容できない場合は、気管が偏位していない側
のような気がしますね。
本日のまとめ
今月号の脊椎脊髄ジャーナルの特集は前方アプローチです。
再考する絶好の機会でした。
最適な答えは持ち合わせませんが、知識は常にアップデートしていきたいですね。
@yotsuba_spineさんをフォロー

コメント