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はじめに


脊椎診療科だから向精神薬は他科のもの、と高を括って良いものでしょうか?
(シャレではないです(汗))

昨今、高齢者に対する手術が激増してきて、術後せん妄に悩むことも多いかと思います。
せん妄の治療に向精神薬を用いる事が少なからずあると思います。

また、不眠症状や消化器症状で薬剤を服薬している高齢者は非常に多いです。

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ちょっとした調べ物をしていて、精神科の文献を読んでいたら、驚きの報告がありました。

抗精神病薬服用患者に多い高プロラクチン血症


抗精神病薬を服用している患者のうち、高プロラクチン血症を呈しているのは、女性患者の約60%、男性患者の約40%もの頻度

と言われているそうです。

向精神薬は精神科の事だから、知らないよ、で済む数字ではないように思えます。

それで、どうして驚いたの??

賛否両論で未だ明らかではありませんが、
長期にわたる高プロラクチン血症は、骨密度を減少させ、骨粗鬆症のリスクになる可能性
というものがあるからです。

というのは、以前、学会で授乳婦の多発性椎体骨折の報告をしました。

乳汁分泌に伴う高プロラクチン血症です。

そう、向精神薬の副作用として高プロラクチン血症はあまり知られていないような気がします。
(もしかしたら、わたしだけ?!)

高プロラクチン血症について


まず高プロラクチン血症の症状ですが、
女性では月経異常、乳汁漏出症、性機能障害、不妊症
男性では女性化乳房、性機能障害
などが典型的症状です。

しかし、前述したように、それに留まらず、長期にわたる高プロラクチン血症は、骨粗鬆症発症のリスクとされます。

つまり高齢者の骨粗鬆症性骨折がさらに起こしやすくなる可能性がある、ということではないでしょうか?

まだ完全にシロクロ判定がついているわけではないので、臨床研究のタネになるとは思います。

プロラクチンの分泌調整の機序


プロラクチンの分泌調整は促進因子よりも抑制因子の方が優勢です。
・促進因子<抑制因子

プロラクチンは代表的な下垂体ホルモンの一つです。
視床下部で分泌が制御されております。
視床下部で下垂体前葉からのプロラクチン分泌を制御しているのがドパミン神経です。

よってドパミン受容体拮抗薬を内服する事で、ドパミンの制御がなくなり、高プロラクチン血症に至るのです。

患者さんのお薬手帳でよく拝見するドパミン受容体拮抗薬は以下のごとくです。

向精神薬

 
抗精神病薬:ハロペリドール(セレネース)、スルピリド(ドグマチール)、リスペリドン(リスパダール)など
抗うつ薬:アミトリプチリン(トリプタノール)、アモキサピン(アモキサン)など

抗潰瘍薬


H2ブロッカー:シメチジン(タガメット)
消化機能調節薬:メトクロプラミド(プリンペラン)、ドンペリドン(ナウゼリン)
そのほか:スルピリド(ドグマチール)

ドパミン合成阻害薬


循環器薬:レセルピン、メチルドパ、ベラパミル(ワソラン)など

本日のまとめ


いかがでしょうか?
ほとんど見ない薬剤もありますが、普段思い当たる薬剤、ありますよね?

ほか、ホルモン剤として経口避妊薬を含むエストロゲン製剤も代表的な薬剤だそうですが、高齢者の閉経後骨粗鬆症の患者さんばかりなので普段、馴染みはありません。。。
しかし、若年女性の骨折に遭遇した場合のために、頭に入れておいても良いかもしれません。

骨粗鬆症性椎体骨折にこのような薬歴があれば少し注意しておかなければならないですね。
もしかしたら今後は精神科との薬剤調整の連携が大切になってくるかもしれません。