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はじめに


前回記事で、ドパミン受容体拮抗薬による高プロラクチン血症について考察しました。


わたしのメンターから質問が届きました。
パーキンソン病で重度な骨粗鬆症が多いのは、そういう事なんですね。

若い女性の出産後の椎体骨折はイヤですね〜。授乳してるから使用できる薬物も限られ、簡易サポーターとアセトアミノフェンだけの治療をしています。人生で最大の骨強度に達するであろう年齢で、プロラクチンの影響で短期間に骨質の劣化が生じることにも驚きます。
とぜんさんは、若年の産後椎体骨折はどのように治療されていますか?ご教示ください!


今回はその続きで、
妊娠・授乳関連骨粗鬆症
についてです。

次々に椎体骨折が連鎖してしまうんですよね。

以前、わたしの施設でも同様の経験をして、学会で報告いたしました。

関西弁さん、はっきりいって明確な治療方針がないんです、、、
とってもと〜っても難しい問題です。

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妊娠・授乳関連骨粗鬆症とは


妊娠・授乳関連骨粗鬆症は
PLO: pregnancy and lactation-associated osteoporosis
としてNordinらによって報告されました。
1995年のpaperなので、比較的新しい概念だといえます。

周産期の椎体骨折や腰痛の原因として、文献的には120例くらいの報告例があるようです。

授乳期での骨密度変化の機序


通常、妊娠期の骨密度は、経度の低下かそれほど変化しないと考えられております。

一方で、授乳期の骨密度は骨吸収亢進とカルシウム喪失により一過性に3〜9%も骨密度が低下するとされます。

その理由は、
①産後の卵巣機能低下による低エストロゲン血症
②授乳による副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)の上昇
により骨吸収が亢進するため、
と考えられております。

つまり、妊娠中の骨格は、エストロゲン欠乏および乳房分泌PTHrPの刺激に応答して、迅速に脱塩されているのです。
こうしてカルシウムを乳汁に(児に)供給します。

乳汁分泌の間にそのようなことが起こっているとは、、、(驚)

Yamamoto Y先生らが以下のように図にまとめております。
002

プロラクチンがPTHrPの分泌の刺激になっております。
そして、同時にゴナドトロピンリリーシングホルモンが抑制され、エストラジオール、プロゲステロンが抑制されていく、、、


他にも、
・栄養状態不良
・カルシウム摂取不足
・骨粗鬆症の家族歴
などの背景があるとリスクが高まります。

治療方法


もちろん、完璧な治療方法は確立されておりません。

基本は、
①断乳(速やかにプロラクチン値は基準値化する)
②外固定
といったところに、
③生活・運動習慣の指導
・喫煙習慣があれば禁煙
・低体重があれば食事運動
などが大切なことだと思います。

そして、薬物療法については
ビタミンD欠乏に対しては補充、ビタミンKも有効とされるが、決め手がない、、、

⑤挙児希望なければビス剤など処方、しかし、挙児希望あればビス剤は長く体内に留まっているはずなので、次回妊娠時の影響が心配。なので使用は控えざるを得ない。

⑥最近ではPTH製剤使用が有効であったという報告が散見されます。
しかし、PTH製剤は使用に2年縛りがあるため、
次回妊娠時に骨粗鬆症を発症したら、どう治療するか
将来の閉経後骨粗鬆症に対しての治療はどうするか
などの答えがありません。

ということで、やっぱり薬物療法は悩ましいですよね。

結局は、患者、家族の社会背景、治療に対する考え方などを十分に話し合い、テーラーメイドの治療を行うことが大切です。

本日のまとめ


比較的遭遇しにくい妊婦・授乳関連骨粗鬆症についてまとめました。
さらなる知見が望まれます。

産婦人科医師との連携も重要になってきますよね。

関西弁さん、スルドイ質問ありがとうございました!!