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はじめに


ビタミンDのトリビアの続きです。

ビタミンD、おそるべしです。
知れば知るほど、自分の無知を恥じています。

カルシウム、リン、、、
学ぶこと、本当に多いですね、、、

外科の技術など、二の次って感じがします。
(いや、やっぱり手術ができない外科医はダメか)

今回は1,25-(OH)2Dと25(OH)Dについてまとめます。

オーダリングの項目に25(OH)Dがない!?


トリビア①記事「ビタミンDの含有食品と1日の推奨摂取量について」
ビタミンDの不足・欠乏が測定できるようになった
ことについて触れました。

オーダリングシステムがアップデートされていなければ
1,25-(OH)2D
の項目のみで、

25(OH)D
の項目がない可能性があります。

実際わたしの施設でもそういう事態が起こっておりました。

わたし「25(OH)Dの項目を見つけきれないので、どのように測定したら良いですか?」
検査科「1,25-(OH)2Dしかないです。これのことですよね?」
わたし「ダメです。25(OH)Dです。」
検査科「?はあ??(この医者なに?バカ?クレーマー?)」

というやりとりになりましたので、骨粗鬆症学会雑誌JJOSを持って、直接検査科に出向き、無事に項目入りして測定できるようになりました。

1,25-(OH)2Dと25OHDの違いについてはビタミンDの生成過程を理解してしまえばなんてことないです。

ただ、わたしのこれまでの人生でビタミンDについてしっかり踏み込んだことがないんですね。

図らずも自分の不勉強を露呈することになりました。
めげずにまとめていきます。

ビタミンDの生成経路


ビタミンDは経口摂取と紫外線生成の二つの経路があることは前回の記事の通りです。

紫外線経路は、皮膚においてコレステロールから作成されたプロビタミンDがUVB照射によりプレビタミンDに変換された後、体温によって熱異性化され生成される経路です。

UVBの照射によって、
・(主に植物に存在する)エルゴステロールからビタミンD2が生成
・(主に動物(魚メイン)に存在する)7-デヒドロコレステロールからビタミンD3が生成されます。

これらはともに肝臓に運ばれ、代謝されます。
それが25(OH)Dです。
25-ヒドロキシビタミンD、と読みます。

肝臓でCYP2R1により側鎖の25位が水酸化されて25-hydroxyvitamin D〔25(OH)D〕となる。


肝臓で25(OH)Dとなって貯蔵されているのですね。

さらに25(OH)Dは腎臓(近位尿細管)に転送され、ここでも水酸化を受けます。
1α-水酸化酵素により水酸化され、活性化ビタミンとなるわけです。

これが1,25-(OH)2Dです。
1,25-ジヒドロキシビタミンDと読みます。
25位(肝臓)と1α位(腎臓)で、水酸化を二回受けるわけです。

近位尿細管でCYP27B1により1α位が水酸化され、活性型の1α,25-dihydroxyvitamin Dに代謝される。


どうりで肝機能障害の患者も腎機能障害の患者も骨質が悪いわけです。

ビタミンD欠乏・不足のチェックには25(OH)Dを測定しよう


なぜ活性化された1,25-(OH)2Dではなく、25(OH)Dを測定するのでしょうか。

というのは1,25-(OH)2D、活性型ビタミンDは、体内では腎臓とPTHにより厳密に一定に保とうとされ修飾されているので、ビタミンDが真に不足、欠乏しているかどうかはわからないのです。

1α-ヒドロキシラーゼは,特にPTHによって厳密に制御されていると考えられており,その活性は血中Ca濃度やP酸濃度の影響を受ける。血中Ca濃度が低い場合は,PTHが補足的に分泌され,腎臓において1α-ヒドロキシラーゼが活性化される。1,25-(OH)2Dは,PTHの合成,分泌においてnegative feed backに働く。

血中Ca濃度が高くなるとCYP27B1活性は抑制される。このため活性型ビタミンDの過剰産生は起こりにくく、栄養素としてのビタミンDの安全性は高い。


一方、25(OH)Dは肝臓での貯蔵型なので、欠乏しているかどうかの判定ができます。

ビタミンDの大部分は25(OH)Dに代謝され、血中で長時間循環するため、栄養素としての生体内におけるビタミンDの過不足の指標となる。


VitDの不足・欠乏を知ることができるようになった


25(OH)Dの測定によって、ビタミンDの不足・欠乏および過剰の状態を知ることができるようになりました。

充足:30ng/mL以上
不足:20~30ng/mL
欠乏:20ng/mL未満

とすることで国内外の見解はほぼ一致しています。

脆弱性骨折全例に測定していますが、20超えている人は皆無です。いや、本当に。
やっぱり日本人(言い過ぎ?骨折患者?)はビタミンDが決定的に不足しているのです!!

保険診療名に注意しましょう


しかし保険診療病名は骨粗鬆症ではありません。
注意が必要です。
ビタミンD欠乏性くる病もしくはビタミンD欠乏性骨軟化症の診断と治療のモニタリング
ということになります。
成人なので、ビタミンD欠乏性骨軟化症としましょう。

本日のまとめ


2016年8月から25(OH)Dの測定が可能となりました。
そして、これらのことは、骨粗鬆症診療医は今後はこのような検査を駆使して、積極的にカルシウム・リン代謝異常についてどんどん踏み込んでいかなければならない、ということになるのではないでしょうか。

骨粗鬆症は、内科・老年科・整形外科・婦人科と多くの科にまたがって治療を受けております。
それぞれの分野の特異性があるとは思いますが、整形外科・脊椎診療科でも努力しなければいけないと考えられます。

Alb、Ca、は当然として、P、intact PTH、25(OH)D、1,25-(OH)2D、尿中Ca/Cr、など測定していく必要があるのかな、と思っています。そうなるとMgも??

ビタミンDにまつわる旅は続いていく・・・多分