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はじめに


把持角度が可変式になったブーメランケージが登場したことで、ケージの前方設置がしやすくなりました。
透視をみながら、より至適な位置、角度にコントロールしやすくなったのです。

この進化のおかげで、わたしにでもブーメランケージを比較的抵抗なく使用できるようになりました。

より前方に設置できるようになったことで、中間の位置にもうひとつブーメランケージを置く、というテクニックも教えていただき、実践して参りました。

この手技で、けっこう自信持っていたのですが、残念なことに、ケージがバックアウトする症例が発生しました。

そんな悩みを吐露いたします・・・

ブーメランケージのメリット


ブーメランケージのメリットは、硬膜嚢や神経根をほとんど牽引することなく、すき間からケージを入れることです。

しかし、ケージのグリップを緩めると、ケージの回転は「なるようにしかならない」ため、100点の前方設置が非常に難しいことが難点でした。

把持角度が可変型になって、その問題は概ね解決されました。

より前方に設置することができるようになったし、カンチレバーで角度も調整できるようになり、使い勝手が飛躍的に向上しました。



ケージのバックアウト発生、その後の経過


そのため、バックアウトの心配なく、割に安心して使用してきました。
・・・ところが発生してしまいました。

これまで通り、前方と中間位置に2個ブーメランケージを入れました。

1ヶ月目のレントゲンで中間のケージが少し後方に移動していて、(まずいな)と思いました。
2ヶ月目では前方のケージもすこし中間に移動し、中間のケージは半分強が椎体外に出てきました。

先のメリットでも述べましたが、神経のすき間から挿入するため、バックアウトしても、そのすき間に戻ってきただけで、患者さんには症状は出現しませんでした。

癒合が得られるまでの間、椎体間固定に不安が残るので入れ替えをお願いしたのですが、患者さん自身には症状がないため、同意が得られず慎重にフォロー、ということになりました。

結局ケージはそのまま動かず、スクリューゆるみなく、ケージの半分が飛び出したまま、術後1年で椎体間は癒合、という結果になりました。

ブーメランケージを2個使用していたので事なきを得たのか、むしろ1個だったら大丈夫だったのか。
しかし1個で移動してしまったら癒合不全は避けられなかっただろうし、、、

何が答えかわかりません。

バックアウトの対策


もともとケージのバックアウトは問題として挙げられております。

そもそもブーメラン型だけがバックアウトするわけではなく、通常のボックス型ケージであってもバックアウトすることは報告されます。

しかし、ブーメランケージだとその頻度がどうやら高いことは、多くの術者が肌感覚で実感しているようです。

スクリーンショット 2018-08-25 6.37.55


圓尾先生のご報告では、術後3か月以内に42%(11/26椎間)のブーメランケージに回旋移動を認めています。

ケージをなるべく前方に位置するように設置することが、ケージ回旋対策と述べられており、わたしもそのように思います。
スクリーンショット 2018-08-25 6.42.38


他にも、ブーメランケージ使用に注意すべき特徴として、
・すべりが残存
・椎体終板の陥凹が大きい
を挙げておられます。

確かに!!

挿入がコントローラブルになったことだけで解消される問題ではないようです。。。

本日のまとめ


ブーメランケージはメリットも大きいです。
とくに、他院のラミネク術後の神経孔狭窄による神経根症、のような症例には、LIFももちろんよい適応ですが、ブーメランケージを用いたTLIFも非常によい適応だと考えます。

バックアウトの問題で、この手技を諦めるわけにはいかないです。

すべりの状況や椎体終板の凹みの形などもしっかり考慮しながら、ブーメランケージの可能性を探っていこうと思います。

前方逸脱についても経験あります。。。
下記記事ご参考ください。



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