カテゴリ:
スポンサードリンク

はじめに


患者さんからの手厳しい質問
「背骨に骨折があるのはわかりました。
・自分の骨折は治りやすいの?治りにくいの?
・早く手術受けたほうがいいの?それともコルセットで様子見ている方がいいの?
という判断を今、してくください。
経過みて結果、後から、どうせ手術受けるくらいなら今、とても痛いんで、早く手術してくださいよ。」

今、いま、イマ、、、

本日は、その解答である
第46回日本脊椎脊髄病学会優秀論文
星野雅俊先生: J. Spine Res. 9:959-964, 2018
予後不良因子を持つ骨粗鬆症性新鮮椎体骨折に対するBKPの有用性
― 多施設前向き介入研究・第1報―

の論文からです。

MRIでの予後不良因子


骨粗鬆症ならびに骨粗鬆症性椎体骨折は高齢化社会において、大きな関心のあるところです。

骨粗鬆症性椎体骨折は基本的には保存加療で予後良好です。

一方で、一部に癒合不全をおこし、後彎変形をおこし、遅発性神経障害をきたす症例があります。
結果、漫然と保存加療を継続することで、患者さんのADLやQOLを著しく損なうわけです。

そういう悪いことが起こるのかどうか、骨折の画像診断がついた時点で的確に予測できれば、治療介入もしやすいわけです。




クリニカル・クエスチョンには臨床研究で


これは臨床研究の出番ですよね。

最先端にあるのは、間違いなく大阪市立大学だと思っています。

星野先生らは、これまでの前向きコホート研究で予後不良をきたす骨折のMRI所見の特徴を以下のようにまとめておられます。

MRI矢状断T2強調像で
高信号型(骨折椎体内に髄液と同程度の高信号領域を有するもの)
②あるいは低信号広範型(骨折椎体内に低信号領域が受傷椎体面積中50%以上占めるもの)

以前、星野先生とお話させて頂いたときに、なかなか広まってくれないんだ、とおっしゃられておりました。
知ってくれていても、T1と誤解されてたりね、、、とも。

この場で強調させていただきます。
T2ですよ〜!!

BKP早期介入.001


今回の論文では、この予後不良因子にBKPを行った群に対して、比較対象として先行研究データベースより保存的にフォローされている予後不良因子を持つ患者さんとをマッチングさせて、治療介入後6か月時点でのアウトカムを検討されております。

・主要評価項目・・・ ADL 低下
・副次的評価項目・・・ QOL(SF36・身体および精神サマリースコア),腰背部痛(VAS),椎体変形進行(椎体楔状角,椎体圧潰率)におけるそれぞれの改善量(受傷時から受傷後6か月における変化量)

結果は、BKP群で
・ADLが低下した患者の割合が有意に少ない
・精神サマリースコアが有意に高い
・椎体楔状角・椎体圧壊率が有意に改善(保存群は悪化)

ただし、隣接椎体骨折は17例/45例(37.8%)に認められた。
保存治療群3例/45例(6.7%)と比べて有意に多かった。


MRIで予後不良因子を有するに対して、BKP早期介入したほうが、保存加療群よりも良好な成績が得られています。
隣接椎体骨折は、評価時点での患者側のADLやQOLの改善が保たれているので、大きな問題にはなっていないようでした。

MRIの予測精度についても、次のように述べられております。

・受傷後2週間以内の特徴的MRI所見の骨癒合不全発生における感度は70、特異度84、陽性的中率47,陰性的中率89。
・受傷後1か月では、感度は93、特異度71、 陽性的中率44、陰性的中率98。

陽性的中率がやや低い値.すなわち特徴的MRI所見が認められた新鮮OVF症例では約半数が骨癒合不全に至ることになる.
一方で陰性的中率は極めて高く,この特徴的MRI所見を受傷後早期に認めなければ、ほとんどの症例で骨癒合が得られる.


いや〜、ほんとうに勉強になります。

ここからは私見です。申し訳ない


この素晴らしいデータのあとに、完全な私見となって申し訳ないのですが、
わたしはT2で高輝度がある症例は、BKPをすぐに検討するようにしています。
なんだか椎体内が水腫のようになっていて、感染の培地になりそう、、、という心配があります。

また、圧壊が高度で局所後彎が強いと、BKPで整復できても、アライメントが後彎に戻ろうとして、結果上が折れてしまいます。

よって、わたしの勝手な思いとしては、早期から圧壊が大きくなっていく症例は、BKPを行うまでに期間を要すると結局、隣接椎体が骨折するという印象です。
そのような症例は4週では遅い、少なくとも2週くらいで決着をつけないといけないような気がしています。

まあ、まったくの私見で、証明したわけではないんですけれども、、、

本日のまとめ


大阪市立大学星野雅俊先生の論文を紹介いたしました。

臨床研究ってすばらしいですよね。

多くの臨床家が抱くclinical questionに対してメッセージを届けることができます。

そして、何より、そのメッセージを受けた医師の医療行動を変えることができます。

自分も臨床の気づきを発信して社会に貢献したいなあ、、、
(ブログ書いてる暇を論文作成の時間に当てよ、と聞こえてきた・・・)

★★★
管理人が医者になって最も感銘を受けた本です!!
臨床研究の入り口に立つために必読です!!第2版になり、上下巻の増量となりました!
もっと若手の時から読んでおけばよかったと思いました。
本を読んで、臨床研究デザイン塾にぜひ参加してください!医者のやり甲斐がますます高まります!